唐突ですが、
あなたが考える「俳優の仕事」とは何ですか?
俳優とは、どんな仕事でしょうか?
実はこれ、ワークショップで参加者によく聞く質問なんです。
なぜこのような質問をするかと言うと、たったこれだけの質問で、その人が、俳優を仕事としてしっかり捉えているかどうかが、すぐに分かります。
あなたは、自分なりの答えを即答できましたでしょうか?
実は、ワークショップに参加してくれる人でも即答できる人があまりいません。
僕のワークショップに来てくれる人の9割以上が、趣味ではなく、俳優を職業にしたいと真剣に考えている人たちにあるにも関わらず、です。
どうでしょう?
「プロの俳優になりたい」「俳優を仕事にしたい」と言っている人が、どんな仕事かをあまり理解できていないという矛盾した現実。
これが他人の話だとしたら、客観的に見て、その人の夢は実現できそうだと思いますか?
ワークショップに参加してくれる人はもちろん、過去の自分自身も含めて多くの辞めていった仲間、そして今現在は一線で活躍するようになった数名の仲間など、たくさんの実例を間近で見てきました。
そんな中で、なかなか俳優を仕事にできていない人の問題点として、そもそも「俳優の仕事を理解していない」ということが大きな一因になっているということに気づきました。
もちろん、俳優の仕事とは、セリフを覚えてただ喋ればいいというほど単純なものでないことは、言うまでもありませんよね。
では、俳優の仕事とは何なのか?
本当に、俳優として収入を得て将来的に「仕事」にしたいと考えているのであれば、まずは、自分が 目指している職業についてしっかり理解しておきましょう。
■セリフを覚えて喋るというのは、野菜を切るのと同じ
俳優の仕事とは何だと思いますか?という質問に、「セリフを覚えてリアルに話す事です」と答える人がたまにいます。
もちろんそれも、俳優の仕事の中では、とても大事な作業の1つです。
でも、それはまだ仕事の途中段階であって、単なる作業工程のひとつでしかないわけです。
もしも、それ自体が「仕事」だとすれば、例えば飲食店に置き換えた場合、「私たちの仕事は包丁で野菜を切ることです」と言っているのと同じですよね?
そして、「仕事」として総合的に考えた場合、極端な話、包丁で野菜が切れなくてもフードプロセッサーが使えれば、全く問題ないことだってあります。
俳優でも、「背中で語る」「目で語る」なんて言われるように、時と場合によっては、セリフなんてなくてもしっかりと感情表現が出来ていたり、伝えることのできる人はたくさんいます。
むしろ、一流の俳優のほとんどがそうでしょう。
もちろん、基本的にはセリフが覚えられなければ俳優として仕事にはなりませんが、作業の工程が一番重要な要素ではないということですね。
■理解しておくべき、仕事の「本質」
それでは、作業工程ではなく、そもそも「仕事」とは何なのでしょう?
たとえば、飲食店の「仕事」では、包丁の扱いが上手いことよりも、美味しい料理を期待して来店してくださったお客様の、お腹も心も満たせる料理(を含めたサービス全般)を提供して、「いかに気持ちよく満足してお帰りいただくか」が大事なことではないでしょうか?
少し重苦しい言葉で言うなら、それこそが仕事における《使命》や《義務》《責任》ということになるのではないでしょうか。
もちろん、俳優の仕事には芸術的要素も含んでいますので、これと全く同じとは言えませんが、だからといって「満足するかしないかはお客様次第」と突き放していては、話にもなりませんよね。
少なからず、俳優の仕事にも同様に、「セリフを覚えて話す」といった作業工程以上に、大事な《目的》や《使命》があります。
その《目的》や《使命》を全うすることが、仕事の「本質」ということになります。
そもそも、ビジネス観点で言えば、どのような職種においても「仕事」である以上は、「価値提供をして、その対価としてお金を頂く」という事が大原則です。
そう。これこそが、もう仕事の「本質」であり、答えですね。
どんな職業においても、この「価値提供」こそが「仕事」であり《使命》だと言えます。
・お金を払うということ。受け取るということ。
自分が、お金を払う立場になった時はどうでしょうか?
それがモノであっても、形のないサービスであっても、十分に満足のいく「価値を提供」してもらって初めて、気持ちよくその対価としてお金を支払うことができるのではないでしょうか?
どんなに安いモノでも、買ってすぐに壊れて、さらにアフターフォローもないような商品は、二度と買いませんよね。
ご飯を食べに行っても、料理自体が美味しくなかったり、接客が悪いと感じるお店には、気持ちよくお金を支払えませんし、二度と行こうとも思いません。
対等以上の価値を感じないでお金を支払うという事は、まるで1,000円の商品券を2,000円出して買うようなものではないでしょうか。
演劇や芝居というのはもっと芸術性の高いものであり、その価値を決めるのは観客や視聴者それぞれである、という声も聞こえてきそうですが、
芸術やアートといった一面もある中で、仕事としての側面があることを忘れてしまっては、ただの自己満足になってしまうでしょう。
自分の願望や欲求も大事ですが、「どんな価値を提供して対価を頂くのか」という、仕事としての「本質」を常に頭に置いておけば、常に観客視点を忘れずにいれるでしょう。
■「欲しい!欲しい!」より「与えたい!与えたい!」
「俳優を仕事にしたい」
「一流の俳優になってたくさんのお金を稼ぎたい」
「あの監督の作品に出たい」
「あの俳優さんと共演したい」
いろいろと願望や欲望はあると思いますが、これらは全て「欲しい!欲しい!」と自分が求める考え方ですね。
自分自身の願望や欲望は大きな原動力にもなるので必要なことですが、「価値提供をして、その対価としてお金を頂く」という原理原則から言えば、何よりも価値を提供することが最優先です。
俳優を自分の職業にしたいと本気で思うのであれば、まずは自分が「何を提供するのか?何を(与えることが)できるのか?」を考えるようにしていきましょう。
■まとめ
「求める」よりも「与える」が先、という「本質」は、
実は、オーディションなどでも同じです。
「役が欲しい」「良い評価が欲しい」「合格が欲しい」
欲しい欲しい星人になってませんか?(笑)
でも、だからこそ!そんな時こそ思い出してください。
テイク&ギブではなく、ギブ&テイクだということを。
常に「ギブ(与える)が先」
「(先に)価値提供をして、その対価として仕事を頂く」(オーディションの場合)
という事を。
先に「自分がどんな価値を提供することができるのか」といった自分自身の商品価値を示す事が大事になります。
ここでも「与えたい!与えたい!」精神ですね????
「価値提供をして、その対価として報酬を頂く」
「欲しい!欲しい!」ではなく「与えたい!与えたい!」
今そのことに気づいたあなたは、チャンスです。
俳優を志す人は多いですけど、「仕事の本質」をシンプルに理解していない人が多いという事は、そこをしっかり考えて行動を起こすだけで、一歩抜け出すチャンスは大きく拡大します。
「価値提供をして、その対価としてお金を頂く」為にできる、俳優としての小さな小さな努力なんてたくさんあります。
「欲しい!欲しい!」と求めるのではなく、与えた後に欲しいものが待っているという事を理解して「与える努力」を徹底的にしていきましょう。
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