俳優を目指す人の中で東京在住でない人は、「東京に行って夢を追うべきかどうか」と、一度は考える人が多いです。
東京に行った方が俳優を職業にするチャンスが多いのではないか?夢を叶える確率が上がるのではないか?そう思いますよね。
実際のところはどうなのでしょうか。
東京には、俳優を職業にするためのチャンスの数は、星の数ほど多いです。
なぜなら、映画でもドラマでも舞台でも、東京で制作している作品がほとんどだからです。
※舞台は、商業的な興行としての舞台を指しています。
たとえば2018年には約73本のドラマが制作されました。
※日本のテレビドラマ一覧 (2010年代)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
中には、関西テレビ制作や東海テレビ制作などもありますが、スタジオ撮影やロケも東京で撮影する場合がほとんどです。
なぜなら、東京以外のテレビ局制作であっても東京支社が取り仕切ることがほとんどですので、当然、制作会社も東京の会社が請負ますし、俳優のキャスティングなども東京の俳優をメインにキャスティングしていきます。
なので、ほとんどのドラマが東京で制作されているということになります。
そう考えると、やはり俳優を目指す人にとって、東京にはチャンスがたくさん転がっている。
それは間違いない事実です。
ただ、もう1つの事実を見落としがちです。
それは、本当は確率が下がる場合もあるということです。
■上京すれば俳優を職業にできる確率が下がる!?
上京さえすれば、俳優を職業にできる確率が上がると考えるのは少し安易な考え方です。
なぜなら、チャンスの数が増えるのと同じだけ、俳優を目指し、そのチャンスをつかもうと頑張っている人の数も増えるからです。
むしろ、チャンスの数よりも人の数の方が増えるかもしれません。
俳優を職業にできる確率が下がるというより、競争率が上がるということですね。
たとえば、10人中1人が受かるオーディションがあるとします。一方で、100人中10人が受かるオーディションがあります。
気分的には10人が受かるオーディションの方が自分も受かる可能性が高い気になりますが、実は、全体人数のうちの1割(10%)の人が合格するという割合は同じです。
でも、100人中5人が受かるオーディションなら、競争率が上がり合格する確率は下がります。
オーディションを受けて1人が合格するというのより、5人が合格すると聞いた方がチャンスは大きくなった気がしますが、何人中かというところが大きなポイントです。
100人中5人ということは、20人中1人の確率と同じです。ということは、10人中に置き換えると0.5人ということになりますよね。
もう一度、比較してみましょう。
10人中1人と10人中0.5人。
確率は上がったでしょうか?
■俳優を目指すなら上京するべきか?
人が増えるということは、それだけ競争率が高くなり、確率も下がることがあるということがわかりました。
さて、ここで本題ですが、それでは俳優を目指すために上京した方がいいのか?
僕の個人的な考えでは、あなたの願望や目的、そして意思によると思っています。
あなたがやりたいことが東京にある、または東京にしかないという場合は東京に行った方がいいでしょう。
たとえば、入りたい劇団が東京にあるとか、所属したい芸能事務所が東京にしかないとか、そういった場合はもちろん東京に行く必要がありますよね。
でも、東京に行く明確な目的がないのであれば、特に東京である必要はないと考えています。
僕は大阪の俳優養成所に入所し、その後、小劇場と言われる小規模な演劇からスタートしました。
それから時が経ち、上京して東京で活動するようになった時も、最初はなんとなく小劇場での演劇活動から始めました。
「プロの俳優になるんだ!」
と、アツい想いは持っていましたが、だからといって特に入りたい劇団だとか明確な目的があったわけではありませんでした。
とにかく東京で活動していれば何かしらのチャンスに巡り会えるのではないか。
そのような気持ちから、まずは何か行動を起こさなければ!と、思い、小劇場で演劇をしていました。
でも、時が流れていく中で実感したことは「それだと特に東京である必要はない」ということです。
■場所よりもっと大事なことがある?
僕が上京して、東京の小劇場で演劇活動をしている時に面白いことが起こりました。
大阪の小劇場で活動していた役者仲間が、東京の大手俳優事務所にスカウトに近い形で所属することになりました。
そして、その後すぐにドラマでも重要な役に大抜擢され、あれよあれよと売れっ子俳優の仲間入りをしました。
大阪で活動していた彼と、東京で活動していた自分。
面白いですよね。
大阪の小さな小さな小劇場界という演劇の世界で活動していたのに、その存在感や魅力が東京の大手芸能事務所にも届き、チャンスをつかんだ彼。
チャンスが星の数ほど多い東京で活動しているのに、相変わらず大きなチャンスに巡り会うこともなかった自分。
この事実からもわかるように、活動する場所が全てではないということが言えます。
結局は、チャンスの数よりも、そのチャンスに巡り会える自分になること、そしてつかみ取れる自分になることの方がはるかに大事なんです。
上記で示したオーディションに受かる割合の話をすると、100人中10人が合格するオーディションがあったとして、その10人の合格者の中に入るということは、10人中1人に選ばれるのと同じ割合です。
ということは、この10人中の1人になるような人は、規模が100人になっても、そのうちのトップ10人の中に入れる可能性が高いということですね。
そして反対に考えれば、10人中1人になるような人でないと100人中10人に入るのも同じだけ難しいということになります。
上記の話しに置き換えれば、チャンスの数も多く、市場の規模も大きな東京が「100人中10人が合格するオーディション」だとすれば、チャンスの数も東京に比べれば少なく規模も小さな大阪が「10人中1人が合格するオーディション」といった感じですね。
規模の大きな100人の中でやることが大事なのではなく、規模の大きさよりも、100人中の10人、10人中の1人、その合格者の枠の中に入るような存在感と魅力のある自分になることが何よりも大事です。
■まとめ
東京は、チャンスの数も多いですし市場の規模も大きいです。
でも、実際に活躍している俳優を見てみれば、その人達が俳優を職業にできたのは単純にチャンスの数が多かったからだけではないことがわかると思います。
どれだけ人の数が多くても、その中でトップ枠に入るだけの実力や魅力がある人が一線で活躍しています。
それは規模が小さくなっても同じです。
10人中1人の「1人」に選ばれる人は、それだけの実力や魅力があるからこそ選ばれます。
たとえ、それが大阪でも名古屋でも北海道でも、そのくらいの存在感や魅力がある人は、東京まで届きます。
上述した僕の役者仲間の話もそうですが、有名なのは大泉洋さんなどがその良い例です。
もともとは北海道で活動していた大泉洋さん。
大泉洋さんの出演していた「水曜どうでしょう」という番組などは北海道ローカル番組で、しかも深夜番組であったにも関わらず視聴率最高18%以上の知る人ぞ知る人気番組でした。
そして、口コミやインターネットでの普及で番組自体が全国区の放送となり、出演していた大泉洋さんの知名度も一気に全国区に広がりました。
それだけ番組自体も面白かったということですし、出演していた大泉洋さんも魅力的で存在感があったからこその結果です。
そうした事実からもわかるように、必ずしも東京でないとチャンスがないわけではありません。
それに、忘れてはいけないのはチャンスの数が日本で一番多いのが東京ですが、俳優を職業にするという夢を叶えられず、諦めて辞めていく人が多いのも東京が一番です。
その現実も踏まえ、本当に上京して東京で活動するのがあなたにとって一番良い選択なのかを考えてみましょう。
- 東京はチャンスの数も多いが人の数も多い。
- チャンスを手にする確率(割合)はむしろ減るかもしれない。
- 夢を叶えられず諦めて辞めていく人の数も東京が1番多い。
- ローカル(地方)で活動していても、そこでしっかりと注目されるような結果を出す人は、東京からも注目され、最終的には東京でも活動するようになっている。
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