「あんなにたくさんのセリフどうやって覚えるの?」
「よくそんな難しいセリフ覚えられるね!」
お芝居をしていない人には驚かれることもあると思いますが、セリフを覚える作業というのはなかなか大変ですよね。
今回は、俳優の仕事の中でもとても大事な、セリフを覚えることについて書きたいと思います。
多くの俳優がそれぞれの経験の中で実践しているセリフを覚えるためのコツと、絶対に忘れてはいけない2つのことをお伝えしますので、これから俳優を目指そうという人は是非参考にしてください。
私はまだ活動を始めたばかりなので「すごいなー、よく覚えられるなー」と驚く側にいます????
経験を積むうちに自分に合った覚え方が身につくと思いますよ!
セリフを覚えるためのコツや実例は後半部分でご紹介しています。
先に、セリフを覚えるうえで絶対に忘れてはいけないことをお伝えします。
セリフを覚えるコツだけが知りたい人は、目次から飛んでください。
それでは、さっそく本題に入っていきましょう。
■セリフを覚えるうえで絶対に忘れてはいけない2つのこと
まず、これを忘れてしまうといくらセリフ(文字)を覚えたとしても俳優としては不合格だと言えるほど重要なことについて。
その2つの大事なこととは以下になります。
- セリフは会話
- 初めて聞く言葉と、初めて口にする言葉
・セリフは会話
当たり前過ぎる事ですが、独白や特別なシチュエーションを除いては基本的にセリフというのは誰かとの会話です。
独白とは
1.演劇で、登場人物が相手なしにひとりで言うセリフ。
2.一人の俳優が演じる芝居。独演劇。モノドラマ。
3.ひとりごとを言うこと。また、そのひとりごと。
引用 コトバンク
会話であるということは自分以外の誰かがそこにいて、その人の言葉を聞いて、何かを感じたり思ったりして、そして、その人に向かって自分も言葉を口にする(投げかける)ということですよね。
セリフのキャッチボールですね⚾️
本当は言葉だけではなくて「心と心のキャッチボール」とも言えますし「感情と感情のキャッチボール」とも言えますが、肝心なのは相手の投げてきたボールによって受け方も違ってくるし、相手との距離感で自分の投げ方も違ってくるということです。
そこで、絶対に気をつけたいことがあります。
それはセリフを覚える時に「決めこまない」ということです。
経験の浅い人に多いのが、台本を読んでセリフを覚える段階で「この台詞はこんな風に言う」「 こんな声のトーンで」「こんなボリュームで」「こんな言い方をしよう」と先に決めこんでしまうことが多いです。
日常生活の中では、会話する前にそんな事を決めていないですよね?
決めこみ過ぎるとどうなるか?
相手のことを無視してセリフを覚えてしまっているので、実際の人物を目の前にして相手が自分の想像と違う出し方(言い方など)をしてきた時に臨機応変に対応できなくなってしまいます。
なぜ対応できなくなるかと言うと、最初から「聞く」より「言う」に意識がいき過ぎているからです。
日常の会話なら相手の顔つきや声のトーン、ボリュームなどを感じながら、言葉のキャッチボールをすると思います。
だから本当は気分が悪いのに気を使って「大丈夫です」という人がいたとしても、顔色や顔つき、声、言い方などいろんな部分から「本当はしんどいのに無理してるんだな」と察知することができて、臨機応変な対応ができたりしますよね。
一方的な決め込みでセリフを覚える人は、そうした相手の反応に対して無関心になってしまいがちです。
そもそも「相手を感じる」という意識が低いので、実際に演技をする段階になっても自分の言い方ばかりを意識してしまって、相手をちゃんと「感じていない」からです。
大事なのはいくつものシチュエーション(相手や状況)をイメージして柔軟に対応できる基盤を作っておくことです。
経験を積めばそれが当たり前になってくると思いますが、最初の段階から「セリフは会話」だという事を頭に置いて、相手を感じる意識を忘れないようにしましょう。
「聞き上手は、話し上手」という言葉がありますが、俳優の場合は「聞き上手は、演技上手」と言えます。
なるほどー????
・初めて聞く言葉と、初めて口にする言葉
セリフが会話であるということは、セリフというのは実際にはそのシーン(場面)の、その瞬間に、「初めて聞く言葉」であるということです。
そして自分が口にするセリフも、その瞬間に「初めて口にする言葉」であるということ。
それを忘れないようにすることが大事です。
セリフを覚える作業の中で、台本に何度も目を通し繰り返し頭に叩き込みながら覚えていくと思います。
その際には、当然、相手のセリフもなんとなく覚えてしまいますし、むしろ、相手のセリフを読むことで自分のセリフの感情や表現を考えたりする場合もあるでしょう。
でも実際には、相手のセリフというのは、その瞬間に初めて聞く言葉なので知っていてはいけない言葉であり「知るはずのない言葉」です。
もちろん、自分が口にする言葉も同じですね☝️
そこを意識しておかないと、演技の段階で初めて聞いた瞬間の「感情」が全くの嘘になってしまいます。
「先読み芝居」と言って、その場にいる誰か一人が予定調和になってしまっただけでも、芝居として成立しません。
普段の会話は、頭の中で台本をめくりながら言葉を追いかけているわけではないですよね?
その時初めて聞いた言葉で何かを感じ、それによってその時に瞬間的に思いついた言葉を口にすることが多いと思います。
人のセリフって「次、私だ」とか考えながら聞いてしまいそう…
なので、セリフは「初めて聞く言葉」であり、初めて口にする言葉」だということを絶対に忘れないようにしましょう。
それをわかっているだけでセリフの「テンポ」や「間」も変わってくるはずです。
以上、セリフを覚えるうえで絶対に忘れてはいけないことを2つだけ書きました。
- セリフは会話(相手がいる)であるということ
- セリフは、初めて聞く言葉であり、初めて口にする言葉であるということ
まずは最低限、この2つだけは頭に入れて台本に書かれた「文字」を覚えるようにしましょう。
覚えた文字を感情のこもった「言葉」にするための大事なポイントを以下の記事でもお伝えしていますので、よければ参考にしてください。
関連記事
■セリフの覚え方とコツ
セリフを覚えるために、俳優がどんな覚え方をしているのか、そのコツをいくつか紹介します。
セリフの覚え方は人それぞれです。
経験を積む中で自分に一番合った覚え方と出会うと思うので、最初はいろいろ試してみることをおすすめします。
くれぐれも、セリフは覚えることが目的なのではなく、血の通った自分の「言葉」にすることが目的なので文字自体は早く覚えられるに越したことがありません。
覚えてからがスタートですもんね????
その通りです????
自分が一番覚えやすそうな方法をどんどん試してくださいね。
①ひたすら繰り返し口を動かす(口に出す)
トイレの中、お風呂で、歩きながら、時には電車の中で、念仏のように何度も何度も繰り返し口を動かして覚える方法です。
俳優を目指す人なら誰もがこの方法は試していると思います。
声に出すか出さないかは別として、口を動かして覚えることの良さの一つには、体がセリフを覚えるということがあります。
口の動きが体にしみ込むくらいやっておけば、たまに本番中に意識していなくても「自然と口が動いていた」みたいなことがあります。
なので、体が覚えてしまうほど繰り返し練習しましょう。
ちなみに声が出せる環境なら、声を出すことをおすすめします。
なぜなら、同時に自分の声で音としても記憶できるからです。
②何度も読んで覚える
できれば声を出すことをおすすめしましたが、声が出せる環境ばかりではないと思います。
そんな時は、声には出さず何度も何度も繰り返し読みこんで覚える俳優も多いです。
この時も、毎回ではなくても読みながら口を動かすことをおすすめします。
理由は、書かれているセリフが普段の自分の話している言葉や口調と違う場合は特に、その言葉を発するときの口の形に自分の口(体)が馴染んでいないからです。
口の形1つをとってもそうですが、誰にでも話し方の「クセ」みたいなものがあるので、その「クセ」が自分のものになっていないとリアリティがなくなります。
それに、口に馴染んでいないと頭では次のセリフがわかっているのに口が回らず「セリフを噛んでしまう」ということが起こったりします。
なので、自分の口にできるだけセリフの口の形を馴染ませておくと安心です。
③書き出す(繰り返し書く)
セリフを紙やノートに書き出すという方法です。
自分のセリフだけという人もいますし、相手役のセリフと合わせてという人、中には、台本上のセリフをまるごと全部書き出すという人もいます。
この方法を実践している人におすすめのポイントを聞いたところ、何度も紙に自分のセリフを書き出していると、書いた時の記憶が手や頭に残りやすく、いざというときに思い出しやすいそうです。
やはり、体に記憶させるのは効率が良いのかもしれません。
夢や目標を達成するためには、願うだけよりも叶えたい夢や目標を全て書き出した方が達成率が上がると言われていますが、同じ原理かもしれませんね。
勉強でも、何度も何度も書いて練習した単語は自然と覚えていた経験があります????
④録音して覚える
セリフを録音して、聴いて覚える方法です。
自分のセリフだけを録音して繰り返し聴いて覚える人や、反対に相手のセリフだけを録音して、それに対して自分のセリフをつぶやきながら練習する人など、やり方はさまざまです。
聴いて覚える方法は移動時間や隙間時間でも有効に使えますし、ヘッドフォンやイヤホンなどをしていれば場所も選ばないところが良いですね。
これは、音と、イメージとで覚えるような感覚です。
ただ、気をつけておきたいのは、録音なので会話の「テンポ」や「間」がリアルではありません。
そこで、変な「テンポ」や「間」まで身につけてしまわないように気をつけたいところです。
⑤イメージや映像として覚える
これは、自分が実践していた方法です。
ただ文字を暗記するという方法が苦手な人にはおすすめです。
私も暗記は苦手だな…????
何度か台本を読み込んで、繰り返し声に出してみたりして、ある程度覚えたところで台本を置いて(離して)しまいます。
そして、目を閉じたり(閉じなかったり)しながら、その場面(景色など)やそこにいるであろう相手のことをイメージ(妄想?)します。
ある程度覚えたセリフをつぶやきながらどんどん妄想していきます。
時間のある限り、いろんなシチュエーションでイメージします。
たとえば、同じセリフでも相手が真顔で言った場合、笑いながら言った場合など、相手の演技が違ったら自分の次のセリフはどうなるんだろうなどとイメージしながらです。
そして、そのイメージをどんどん膨らませていきながら、同時にセリフをぶつぶつつぶやきます。
セリフが出てこないときは、その時だけ台本を開いてチェックします。
そうやって、自分なりの場面のイメージや相手とのやりとりを、頭の中の映像として記憶していく方法ですね。
ただ、忘れてはいけないことでお伝えしたように「決め込まない」ことは大事です。実際の相手があってのことなので、あくまでも柔軟に。
⑥感情で覚える
これもイメージや映像に少し似ていますが、感情で覚えるという方法です。
台本を読み込みながら、「このセリフは、なぜこれを言ったのか?」「どんな感情で言ったのか?」など、話し相手と自分のやりとりを読み取り、そのときの感情を記憶するような感じで覚えるという方法です。
文字を覚えたあとで、次の段階として感情を作っていく、あるいは乗せていくのではなくて、セリフを文字として覚えながら同時に感情をイメージし心の動きで覚える方法です。
台本でなくて小説などでも、面白くて大笑いしたところや悲しくて泣きながら読んだところなどは忘れにくいですし、仮に忘れていたとしても思い出しやすいですよね。
それに近い感覚だと思ってもらえれば良いかと思います。
文字と感情との同時進行は難易度が高そうですね????
自分に合ったやり方が絶対あるので合う方法を見つけましょう????
■まとめ
文字として書かれたセリフを、感情のこもった言葉にするのが最終的な目的ですが、まずは文字自体を覚えないと次のステップに進めませんよね。
セリフを自分の言葉にするまでのプロセス(過程)は本当に人それぞれですが、どれが自分に合うのかはやってみないとわかりません。
考えるよりも行動しよう!が鉄則です。
- ひたすら繰り返し口を動かす(口に出す)
- 何度も読んで覚える
- 書き出す(繰り返し書く)
- 録音して覚える
- イメージや映像として覚える
- その時々の感情で覚える
冒頭で解説した2つの大事なことも忘れないように注意しましょう。
- セリフは会話
- 初めて聞く言葉と、初めて口にする言葉
経験を積んだ俳優の中には、セリフをがっちり覚えずに、あえてイメージも膨らませず現場に入ってから実際の景色や相手の顔、声、口調、雰囲気などに合わせて自分の役に入っていくという俳優もいます。
が、最初からそれは難しいですし全員に合う方法ではないので、最初は基本的なセリフの覚え方をいろいろ試して自分に最も合う方法を早く見つけましょう。