この記事では、演じる役の「内面」を重視したセリフの練習方法と覚え方をご紹介します。
どうしたらもっと演技がうまくなれるんだろう…
もっと深みのある演技がしたいな…
どんな風にして役作りして練習すればいいんだろう…
といったことを解消しますので、以下のような人は是非読んでみてください。
- 演じる役の人格や性格、人間性を深める為の方法を知りたい
- セリフを練習する際にどこに重点を置いて、何を意識すればいいのか知りたい
- 今よりもっと俳優としての幅を広げ、知識の引き出しを増やしたい
■台本を読んで、何からやればいいか
まだ俳優活動を始めたばかりの人や初心者のうちは、台本をもらってまずは文字を覚える「暗記法」のようなやり方だけになってしまうことが多いと思います。
でも、俳優の仕事はセリフを暗記して話すだけではなく、ちゃんと感情や想いのこもった「言葉」にする必要があります。
舞台のように長い稽古期間があればゆっくりやればいいかもしれませんが、映像の仕事では撮影までそれほど時間のないときもありますし、相手役と実際に練習する機会がない場合も多いです。
そうすると、自分自身で役を構築していく技術や知識、そして瞬発力が必要になります。
なので、できるだけ早く「役作り」する為の練習方法を身につけたいところです。
その為の大事なポイントをご紹介します。
台本を読んでまず最初にやることは、セリフの言い方や雰囲気を想像することではなく、その人物の「人物像」を明確にすることです。
「人物像」を明確にすることはもちろん、セリフの練習や役作りをする上で、わかりやすく考えるために、
「 内面:表出:表現の法則 」
という、3つの視点から考える方法を以前の記事で紹介し、推奨しています。
- 【内面】心の内面。感情。思考。想い。など
- 【表出】内面を「どのくらい」「表」に「出す」か。または「出る」か。
- 【表現】「どんな風に」「表」に「出す(現す)」か。
今回の記事では、この中で【内面】に重点を置いた大事なポイントをお伝えします。
■役作りは、まず「知る」ことから始まる
台本をもらって最初はできるだけニュートラルな状態で台本を読むことをおすすめします。
初めて会う人に感じる「第一印象」と同じように、まずは純粋に「その人」を感じ取りましょう。
そして、自然と受け取るイメージや印象を大事にしましょう。
台本に書かれた文字を読んだだけで、その人の口調や話し方などを早々とイメージするというのは、よく知りもしない人を勝手なイメージで決めつけるのと同じようなものです。
もしも自分がそういった状態になりそうなときは、一旦、頭の中をリセットしてください。
役の人物を演じる上で大切なのは、まず「その人」をよく知ることです。
その人の性格や人格、人間性など【内面】を知ることが最も大切です。
台本を読んでいきなりセリフの言い回しや口調などを考える人というのは、実は一番難しいところから始めているということなんです。
性格などを知っている人のことなら「あの人ならこんな感じで言いそう」と想像できるかもしれませんが、よく知らない人のことは想像もできませんよね。
なので、「まずは知ること!」と頭に置いておいてください。
■初心者の役作りのコツは【役の履歴書】
【内面】を明確にするためには、まずその人物のことを「知る」ことから始めると言いましたが、その方法としてよく言われることが「役の履歴書を作る」というものです。
役作りの一番基本的な部分と言うか、初歩の初歩ですね。
1人の人間の「性格」「人格」「人間性」などは、さまざまなものが絡み合っています。
生い立ちや、周囲の人との関係性、過去に経験した出来事など、生まれ持ったものから後天的な要素まで、いろんなことが含まれて構築されています。
「履歴書」は、物語自体にはあまり関係ない場合もありますし役を演じる上で必要のないことも多々あるかもしれませんが 、一度は実際に作ってみることを強くおすすめします。
基本的に台本上には、物語の中で必要となる情報しか書かれていないことがほとんどです。
でも、その部分的な情報だけで1人の人間を演じるというのは実際には難しいと思いませんか?
特に、 俳優活動を始めたばかりの人や初心者のうちから限られた情報だけを頼りに1人の人間像を作り上げていくことは至難の技です。
そんな時に役立つのが、この「役の履歴書」を作ってみることです。
・兄弟はいるのかな?
・いるとしたら男兄弟?女姉妹?
・自分は何番目?
などを考えることで、長女なら「長女っぽさ」や、末っ子なら「末っ子らしさ」を、物語のどこかで表現することもできるかもしれません。
それだけで、 演技に深みが出たり信憑性が増すことに繋がります。
でも実は、僕がおすすめしたいのは履歴書以上にもっともっと細分化して一つ一つを明確にすることです。
面倒くさいから多くの俳優はやりません(笑)
でもだからこそ、他の俳優との差が生まれます。
1つ1つ細分化して具体的にすることで、誰がその役を演じるよりも深い人物像を描けます。
もちろん、経験を積むことで自分にとって最善のやり方が見つかると思いますが、それまではやれることは全部やる!くらいの意気込みで是非やっていきましょう。
人物像を明確にするために、どんなことを考えればいいのかをざっと書き出してみると、
- 生年月日(年齢)
- 出身地(現住所も)
- 血液型
- 星座
- 趣味
- 特技
- 身長
- 体重
- 服や靴のサイズ
- 家族構成
- 恋人の有無(過去の恋愛経験など)
- 学歴
- 職歴
- 学生時代の一番の思い出(良い思いでも、良くない思い出も)
- 学生時代のクラブ活動は?
- 一人暮らし?実家暮らし?
- 料理は作れる?
- アウトドア派?インドア派?
- 長所と短所は?
- 好きな食べ物と嫌いな食べ物は?
- 座右の銘は?
- ニックネーム(あだ名)は?なぜそう呼ばれるようになった?
- 口癖は?
など、数限りなくあります。
上記の項目を埋めるだけでも、どんな人かが少し明確になりますよね。
ここに挙げたのはごく一部ですが、さらに多くの項目を一覧にしてPDF資料としてダウンロードできるようにしておきましたので、よければそちらを参考にしてください。
PDF資料
もちろん台本に書かれている情報だけでは埋められない項目もありますが、埋められる項目もあると思うので、できるだけ多く埋めてみると人物像に深みが増します。
考えれば考えるほどもっともっと出てくると思いますが、こちらの一覧を埋めるだけでも自分が演じる「役」への理解度が大幅に深まり、自分自身の中での大きな自信にも繋がるので是非、試してみてくださいね。
■まとめ
セリフの練習と言うと、ただひたすら繰り返し口にすることだけではありません。
それは、野球やテニスのようなスポーツに例えるならただ素振りを繰り返しているだけです。
でも、 打つためにやることは素振りだけではありません。
ゆっくりとフォームを見直す作業や打つための理論を考える時間、そして目的に沿った筋肉を鍛えるトレーニング、ケガをしないためのストレッチなど、1つの結果を出すためにやることはたくさんあります。
格闘技選手だって、サンドバックを繰り返し打つだけが唯一の練習方法ではないですよね。
俳優の場合も同じで、文字として書かれたセリフを暗記して「はい、終わり」ではありません。
文字で書かれたセリフを「自分の言葉」にするまでには、やることはたくさんあります。
その一番最初の作業が、役の人物を「知り」人物像を明確にすることです。
つまり、性格や人格、人間性といった【内面】を作り上げるということですね。
内面が明確になればなるほど、ちょっとした会話(演技)のでの表情やリアクションなどにも変化がでてきます。
地道な作業ですが、是非【内面】を埋めることに尽力してくださいね。