セリフの練習の仕方や、「重点をおくべき大事なポイント」について書きたいと思います。
まず今回は、台本に文字として書かれたセリフを「言葉」にするために最初にやることをお伝えします。
「セリフを覚えて自分の言葉にする」というのは、台本に書いてある文字を暗記して間違えないように話すということではありません。
書いてある「文字」を覚えただけで現場に行ったら、それでもうアウトです。
「セリフになってないよ!」と叱られてしまう可能性大です。
ベテランの俳優の中には、あえてうろ覚えのような状態で現場に入り、その場の空気や風景、相手役の容姿や声などを肌に感じてから一気に役に入り込むという俳優もいます。
でもそれは、相当の経験がある俳優の中でも、ごく一部の人の話です。
叱ってくれる監督ならまだいいですが、何も言われず「二度と現場に呼んでもらえない」ことも多々あります。
なので、現場は仕事の場であり、そこにはプロの集団がいるということを頭に置いて最善の準備をして仕事に臨むようにしましょう。
そこで今回は文字として書かれたセリフを血の通った「言葉」にするための、わかりやすい3つのポイントをお伝えします。
たった3つに分けて考えるだけで驚くほど演じやすくなりますので是非実践してください。
■セリフを自分の言葉にする3つのポイント
セリフに限らず表現全てにおいて大事なポイントとなる3つのポイントをお伝えします。
その3つのポイントとは、「内面:表出:表現」です。
わかりやすく分けて書くとこんな感じです。
- 【内面】心の内面。感情。思考。想い。など
- 【表出】内面を「どのくらい」「表」に「出す」か。または「出る」か。
- 【表現】「どんな風に」「表」に「出す(現す)」か。
感じたこと(または考えていること)をどのぐらい表に出すのか?どんな風に表に出すのか?ということです。
たとえば悲しいことがあったときに、思いっきり泣いて悲しむ人もいれば、グッと唇をかみしめてこらえる人もいますし、無理に笑って強がる人もいます。
同じような出来事があっても、人によっては受け止め方やそのリアクション、どう表現するかは様々ですよね。
出来事に対して、「どう」感じる(または、考える・思う)かは人それぞれ。【内面】
そして、感じたことを「どのくらい」表に出すかも、人それぞれ【表出】
もちろん、「どうやって」表に出すのかも、人それぞれです。【表現】
この「人それぞれ」は、自分が演じる「役」と、自分自身の間にもあてはまります。
あなたと、あなたが演じる「役」の感じ方、考え方や表現の仕方は、同じ部分もあるかもしれませんが、多くの場合は違っていて当然です。
あなたが演じるとは言え、演じる「役」はあなたとは違う「他人」ですからね。
他人を演じるということは、自分の中にはない価値観や考え方、または表現方法などを取り入れていかなければいけない難しさがあります。
それを冷静に、客観的に考えるうえで、この「内面:表出:表現の法則」はひとつの指針になり、わかりやすい考え方になりますので是非覚えておいてください。
この3つのポイントは以下の記事で詳しく解説しています。
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■セリフは疑え
もう一つ、言葉の中身を埋めていく時にとても大事なことがあります。
それは、まず「セリフを疑え」ということです。
最初から、書かれている文字だけを鵜呑みにせずにいろいろな方向から考えてみます。
たとえば、
「あなたのことが、好きです」
というセリフが書かれていたとします。
それを「あ、私はこの人のことが好きなんだ…」と単純に受け取るのではなくて、
- 「本当に?」
- 「なんで?」
- 「どこが?」
- 「どのくらい?」
- 「たとえばそれが嘘だとしたら?」
など、このように考えてみるだけで紙に書かれた文字が少し立体的になってくるような気がしませんか?
なぜなら、少し疑問を持ってみるだけでその裏づけが必要になってきますよね。
それが良いところで、自分自身で納得できるだけの「理由」や「事情」「動機」を発見する手がかりになります。
たとえば、相手役の「ここが好きなんだ」とか、「どのくらい好きなんだ」とか、そういった細かな部分が少しずつ明確になることで、演技も変わってきます。
疑ってみることで、本当の真実や、目的、企み、度合い、性格など、様々なことが明確になります。
そこがとても重要で、役の人物像を深く掘り下げていくうえで、自分に議題を投げかけていく感じですね。
■一番「知っている人」になる
これはセリフの練習ということではないんですが、自分ではない「違う人間」を演じるうえで意識しておくとわかりやすいポイントになります。
よく自分と役との距離感というか他人になりきるということにおいて、「役と友達になる」というような表現をする俳優もいますが、わかりやすく言えば「一番知っている人」になることだと考えてください。
どういうことかと言うと、あなたが一番よく知っていると思う人は誰でしょうか?
親かもしれませんし、兄弟、恋人、友達かもしれませんが、普段の口調や癖、趣味など、その人のことならほとんどのことが語れる、というような身近な人はいませんか?
たとえばそういう人って、実際にはその場にいなくても「もしここにいたら、こんな感じだろうな」と、割と明確に想像できないでしょうか?
そのようにして誰にでも「一番知っている人」として、頭に浮かぶ人がいますよね。
その人の言い方を真似てみてと言われたら、なんとなくその人が言いそうなことが連想できるし、そのときの口調や表情まで明確に想像しながら真似ることができませんか?
そういう風に考えると、「演じる」って自分の中のイメージを再現するという言い方ができますよね。
なので、俳優には何より「想像力」が必要だとよく言われます。
反対にあまり深く知らない人のことは、真似てみてと言われても、真似るどころかそもそも想像すらできないわけですよね。
そうした観点から言えば、「役作りする」とか「役を掘り下げる」作業というのは、まず何よりも、より深くその人のことを「知ろうとする」ことから始まります。
そういう感覚を持っておくと、セリフを覚える時や、セリフを話す時にもイメージしやすくなるので是非覚えておいてください。
■まとめ
セリフの練習をするにあたって一番最初の心得のような部分ですが、まず知っておくべきことからお伝えしました。
- 内面:表出:表現の法則
- セリフは疑え!
- 一番「知っている」人になる
まずは、この3点を頭に置いて台本を繰り返し読んでみてください。
それだけでも、いろんな発見があるはずです。
文字として書かれたセリフを血の通った「自分の言葉」にするための心得を確認したら、次のステップに進みましょう。
自分が演じる「役」の性格や人格、人間性といった【内面】を深めていく方法と大事なポイントは以下の記事で解説しています。