今回の記事は、セリフの練習ステップ3ということで、【表出】と【表現】に重点を置いた解説をしていきたいと思います。
どういう視点からセリフを考えればいいのかという大事なポイントを、大きく5つに分けてわかりやすく説明します。
セリフを考えるときのわかりやすい考え方として「内面:表出:表現の法則」という独自の視点からステップに分けてお伝えしています。
まだ、セリフの練習をする上で最初に理解しておくことや、ステップ2の【内面】に重点を置いた記事を読んでいない人は先にそちらから読んでいただくことをおすすめします。
✅ この記事を読めばどうなる?
- 【内面】に基づいて、その「役の人物」特有の表現方法を考える具体的な方法がわかる
- セリフを言葉にする。つまり文字の中身を埋めるということの意味がよくわかる
- どこに重点を置き、何を意識すればいいのかが明確にわかる
- 台本の読み方がわかるようになる
- 役作りのやり方や順序などがわかるようになり、そこまでの過程が大幅にスピードアップする。
今回の記事はこのような記事になります。
■【表出】【表現】とは?
「役」をわかりやすく理解する上で3つの視点があって、それを僕は【内面】【表出】【表現】に分けて「内面:表出:表現の法則」と呼んでいます。
簡単に説明すると、
- 【内面】性格。心の内面。感情。思考。想い。など
- 【表出】内面を「どのくらい」「表」に「出す」か。または「出る」か。
- 【表現】「どんな風に」「表」に「出す(現す)」か。
という感じになります。
何か1つの出来事が起こったときに、それを「どうとらえるか?」「どう受け止めるか?」「どういうリアクションをするか?」は、人それぞれの性格や考え方などによって違います。
つまり、リアクションや表現というのはその人の【内面】(性格や人格、人間性)によって、その人特有の表現方法があるということですね。
なので、何よりも大事で、他の何よりも先にやらなければいけないのは「役の人物」がどんな人かということを知ることです。
それが【内面】を明確にする作業です。
でも、多くの人は、台本をもらって目を通してすぐに「言い方」などの【表現】から先に入る人が非常に多いです。
大事なことなので何度も言いますが、「どこまで表出するのか?」と「どういう表現方法で?」は、その人物の性格や人格などによります。
なので、まずは性格や人格、考え方などの【内面】から入るようにしましょう。
■セリフを自分の言葉にするための大事な5つのポイント
【内面】が明確になったら、次にその人特有の表現方法というのを考えていきましょう。
セリフを覚えるだけでも大変な作業ですが、それを「表現する」となると更に難しく、そして奥深くなります。
ただ文字を覚えて間違えないように言えるようになることだけが、セリフの練習ではありません。
文字の中に込められた感情や思考など中身を埋めてはじめて「言葉(セリフ)」になります。
そこで、【表出】【表現】について考えるための大事なポイントを大きく5つにまとめたので、こちらを参考にしてください。
セリフを「自分の言葉」にするための5つのポイント
- 相手との関係性
- なぜ、今そのセリフを口にしたのか?
- その言葉を口にする「真の目的」は?
- 言いたくて言ったのか?おもわず言ってしまったのか?
- その言葉をどんな風に言ったのか?
書き出せばもっともっと限りなくありますが、ここでは最低限のポイントだけを書きます。
まずは、この上記5つのポイントを埋めるだけでもセリフの信憑性やリアリティー、そして深みが違ってきます。
・【相手との関係性】
相手との関係。距離感。を具体的に。
たとえば、同じ「友達」でも、その関係性によって人それぞれの距離感がありますよね?
会った時にちょっと挨拶をかわして当たり障りのない話をする程度の「友達」や、恋人のことや家族のことなど深い部分まで相談できる心を許した「友達」など。
自分が演じる「役」と、その他の登場人物との関係性や距離感を1人1人明確にしていくことで、セリフの言い回しや口調、タイミングなど全てにおいて違ってきます。
反対に言えば、セリフの言い方だけで見せようと思っても実際の関係性とセリフの距離感があっていないと「不自然」に見えてしまう場合があるということです。
なので、まずは相手との関係を具体的に明確にしておきましょう。
・【なぜ、今そのセリフを口にしたのか?】
自分が言葉を口にするには様々な動機やきっかけがあると思います。
「誰かの言葉のどこかに反応して?」「何かを感じて?」「どうしても今、伝えたいことがあって?」など、何がきっかけなのか?や何を思って?など、今この言葉を口にしたのはなぜだろう?と考えてみてください。
たとえば、もしも誰かの言葉の中の「どこか」に反応したのなら、演技の中でもその「どこか」をちゃんと聞いて反応しないと「嘘」の演技になってしまい違和感が残ります。
・【その言葉を口にすることによって、何がしたい?】
その言葉を口にすることで「何が言いたいのか?」「何をしたい?」を考えます。
「要するに何が言いたいの?」と置き換えて考えてみるとわかりやすいです。
本当の「目的」は何なのか?ということを考えるということですね。
たとえばわかりやすい例として、誰かと口げんかした場合などに、本当に言いたいことはただ一言謝ってほしいだけなのに、思わず言い過ぎてしまったり、その人の過去の失敗まで持ち出して愚痴ってしまったりしたことはないでしょうか?
そういう場合も、本当はぐちぐちとその人を責めたてるのが目的ではなく、最終的な「目的」は<一言謝ってほしい>これだけですよね。
それを遠回しに言ってみたり、ついつい言い過ぎてしまったり、反対に言葉が足りなかったりと、人間にはストレートに上手く伝えられないことってありますよね?
そのように、セリフの奥に隠れた本当の「目的」は何なのかを考えてみましょう。
・【言いたくて言ったのか?思わず言ってしまったのか?】
そして、これも大事です。今、自分が口にするセリフは、
- 言いたくて言ったのか?
- 言いたくなかったけど、言わないとしょうがなくて言ったのか?
- 言いたくなかったのに、ついつい(おもわず)言ってしまったのか?
- 無意識にポロっと口に出てしまったのか?
など、自分が言葉を口に出すときにもいろんなパターンがあると思います。
それによって当然、同じセリフでも言い方、声のトーン、ボリュームも、間も全然違ってきますよね?
・【その言葉を、どういう風に言ったのか?】
最後にその言葉を「どうやって」「どんな風に」言ったのか、表現の部分について考えましょう。
おすすめは、同じセリフでも泣きながら、笑いながら、怒りながら、おちゃらけながら、などいくつものパターンで言った場合のシーンをイメージしてみましょう。
実際に声に出して練習してみるとリアルに実感できるので、声が出せる環境にいる時は是非実際に声に出して練習してくださいね。
このときのポイントは、肯定的にイメージすることです。
イメージする前から「ここで泣くのはおかしいよね」と否定的にイメージするのではなくて、どうすればそれが成立するかな?と、成立させるためにはどうすればいいかを考えてみましょう。
よく夢や目標を達成するという分野で、夢を実現させていく人は「できない理由を考えるより、できる理由を考える」と言われますが、まさに同じです。
その人にしか出せない味を持っている一流の俳優と言うのは、10人中9人が泣く演技をする場面でも、笑いながら演じたりする人がいます。
そしてその笑顔が、反対に心の葛藤や辛さ、切なさを絶妙に表現していて絶賛されるようなことが多々あります。
■まとめ
- どれくらい【表出】するのか?
- どんな風に【表現】するのか?
を、わかりやすく考えるための5つのポイントをお伝えしましたが、それもその人の性格や人格によります。
なので、台本をもらってセリフとして書かれた文字を暗記するのと同時に、まず最初にすることは、性格や考え方、思考など【内面】を明確にすること。
そのあとで、【表出】【表現】について考えるようにしましょう。
最後に、いくつかの記事にわけてお伝えした、セリフの練習についてことをまとめておきます。
✅ セリフとは?忘れてはいけない2つのこと
- 会話である。(独り言ではなく、相手との言葉と気持ちのキャッチボール)
- 実際には、その時その瞬間、初めて聞く言葉で、初めて口にする言葉であるということ
✅ セリフの練習をする上での心得
- 【内面:表出:表現の法則】を知る。3つの視点
- セリフは疑え!
- 役の人物を「一番知っている人」になる
✅ 【内面】を明確にする。(どんな人物かを知る)
- 台本を読んで、まず最初にやることは「知る」こと
- 人物像を明確にする項目一覧を埋めてみる
✅ 【内面】に基づき、【表出】【表現】を考える5つのポイント
- 相手との関係性を明確にする
- なぜ、今そのセリフを口にしたのか?【何を思って?】【きっかけは何?】
- 要するに、何がしたい?何が言いたい?【真の目的は?】
- 言いたくて言ったのか?言わないとしょうがなくて言ったのか?言いたくなかったのに言ってしまったのか?無意識にポロっと口に出てしまったのか?など
- その言葉をどんな風に言ったのか?怒りながら?笑いながら?【表現】