「俳優になるのに学歴は重要ですか?」
「俳優という仕事に必要なものって何ですか?」
「何を勉強すればいいですか?」
「どんな風にして演技の勉強をすればいいですか?」
「何を訓練したり練習したりすればいいですか?」
このような質問を受けることがよくあります。
答えは簡単です。
現在、一線で活躍している現役の俳優を見渡してもらえばすぐにわかることですが、俳優になる上では高学歴かどうかはそれほど重要ではありません。
中卒や高卒でも一流の俳優はたくさんいます。
そして、何を勉強すればいいかというのは、目指す先によって多少の違いはあるものの、(たとえば立ち回りができる俳優を目指すのであれば殺陣を習うとか、ミュージカル俳優を目指すのであれば歌やダンスを習うとか)俳優全般的に共通して言えることは、まず何よりも「感じる心」を育てることです。
人間の表現とは、口先や頭だけで表現するものではありません。
自分の行動や表現を思い返してみてください。
日常の中でも、ついつい怒ってしまってキツイ口調になってしまうことがあるかもしれませんし、嫌な事やしんどいことがあって(その反対で嬉しい場合も)おもわず涙があふれてしまうこともあるでしょう。
でも、最初に頭で考えるでしょうか?
「今、キツイ言い方をしてやろう」とか「よし!、このタイミングで泣いてやろう」などとはあまり考えませんよね。
考えるよりも先に、心が何かを感じ、それが感情となって自然と表に出ます。
それが「表現」です。
もちろん、考えながら話すときもあれば、子どものしつけなどでわざとキツイ言い方を選択する場合などもあるかもしれませんが、それもまずは心で感じることが先だと思います。
なので、俳優は自分が演じる役の人物が、その時々で何を感じていたのかをまずは理解する必要があります。
「こう感じたから、こう考えた」
「こう感じたから、こう言った」
と、まずは感じてから次の行動(表現)に繋がっていくわけですね。
その「感じとる心」のことを、感受性を言いますが、俳優を目指すのであれば何よりもこの「感じる心」を育むことを意識しましょう。
■一流の俳優は感受性が強い
第一線で活躍しているような一流の俳優は、ほぼ例外なく感受性が強いです。
なぜなら、感じ取ることができないものを表現できるはずがないからです。
「この気持ちはよくわからないけど《こういう言い方で言ってみよう!》」
というようなことはありえませんよね。
なので、俳優を目指すのであればまずは感受性を養うことです。
つまり、人の気持ちをわかろうと努力することから始まります。
セリフの言い方やそれっぽい表情の作り方などテクニックに走らずに、まずはいろんなことを感じ取れる心を養いましょう。
感受性とは
感受性はよく感性と似た使い方をされますが、 若干ニュアンスが違います。
感受性は「感じとる心」と言いましたが、例えば道端に咲いている花を見て「綺麗だな」と感じる心は感受性です。
普通にしていると見過ごしてしまいそうな小さなことでも、敏感に何かを感じたり自分なりの感想を持つ人がいます。
そういう人は「感受性が強い人」ということですね。
そして、その感じとった「綺麗」を絵にしたり、歌にしたり、言葉にしたりすることを「感性」と言います。
つまり、感性は心で感じたものを表現に変える「センス」や「能力」のことと言えます。
ですので、感受性と感性は似ていますが若干ニュアンスが違います。
感性は次の段階の話になりますので、今はまず「心で感じる」ということにフォーカスしていきましょう。
感受性の強い人の特徴
さて、あなたは感受性が強い方でしょうか?
ここで一度感受性の強い人の特徴を見ていきましょう。
感受性の強い人が優れた俳優になる理由がよくわかります。
感受性の強い人の特徴
- 同じく、方々に目を向けることができるので、自然と細やかな気配りができる
- 人の気持ちにも敏感なので、感情移入しやすく得意でもある
- 小さな発見を逃さず、些細なことにも感動できる
- 心が豊かで愛情が深いので小さなことでも大事にする
- 自分の心に正直な人
- 五感が優れており、優れた芸術的センスを持っている
いかがでしょうか、自分に当てはまりますか?
こうして主な特徴を見るだけでも、俳優にとって大事な要素がつまっていることがよくわかりますよね。
ただ、心が繊細で敏感なのでネガティブな特徴もあります。
- 何事にも敏感なので神経質になり過ぎてしまう
- 人の気持ちを察するのが得意な反面、人の気持ちを汲み取り過ぎて自分のことは後回しにしてしまいがちなので、わがままを言えなかったり、甘えることが苦手な人も多い
- 気を使い過ぎ疲れてしまったり、ストレスを溜めてしまいがち
- 「自分が、自分が」と前に出ることが苦手な一面もある
- いろいろな物事を敏感に感じるので、精神的に疲れやすい
感受性の強い人は適職
感受性の強い人の特徴は、あなたに当てはまっていましたでしょうか?
特徴を見てもわかるように、俳優は人の気持ちに敏感な方が良いことは言うまでもありません。
映像の場合だと、ちょっとした感情が全て表現につながります。
例えば、カメラがあなたの右側から横顔をアップで撮っているとします。
その時に、嫌な言葉やあまり聞きたくない言葉を言われたとします。
あなたなら、その嫌な気持ちをどう表現しますか?
自分の横顔しか映っていない状況で、その小さな感情の変化をどう表すか。
以前何かのドラマで実際に唐沢寿明さんがこのような同じ状況で演技をされていました。
その時に唐沢さんはどうしたか。
唐沢さんは、奥歯をぐっとかみしめたんです。
そうすると筋肉の筋が動きます。
たったそれだけのことで、その嫌な言葉を聞いた時の感情を見事に表現されていました。
このような小さな表現も、日ごろから人の行動や感情に興味関心を持って「人はこういう気持ちの時にはこういう動きをする」というようなことを観察していないと気づけません。
一流の俳優というのはそれぐらい細かいところまで神経を配っています。
なので、どんなに小さなことにも興味を持って観察するようにしましょう。
人の気持ち、またはその気持ちの変化に敏感に気づけるようになって初めて表現に近づくことができます。
そこから先はテクニックなども関係してきますが、最初に人の気持ちを理解できるようになること。
まずそれができるようになると、あなたにとって俳優は適職と言えるようになるでしょう。
■感受性を高める4つの簡単な訓練方法
感受性が高い人の特徴に当てはまらなかった場合も心配はいりません。
感受性豊かな俳優になるために、今からあなたの感受性を高めていきましょう。
ここでは、簡単に感受性を高めることのできる訓練方法を4つご紹介します。
- 普段はあまり目を向けないような道端に咲いている花や植物、そして昆虫、空の色、風の匂い、風の温かさ、聞こえてくる音(声)など、ありとあらゆるものに意識を向けながら散歩してみる。(晴れた日だけではなく雨の日も散歩してみると、晴れの日には見られない景色が見られたり、新しい発見があります。時々は道を変えて歩くのもおすすめです。)
- 読書する。(文字ばかりの本だけではなく、絵本など想像力を要するものなどがおすすめです。文字ばかりの本を読むときは、景色や季節、天候など情景を思い浮かべながら読むようにすると良いです。)
- 映画、舞台、音楽、美術鑑賞など五感を刺激するものをたくさん観る。
- 人間観察。(年齢や家族構成、仕事、趣味、性格、血液型、今日の気分などいろんなことを想像しながら観察してみるととても面白いです。そしてたくさんの発見や気づきがあります。)
感受性を高める上で一番よく言われることは、まず、こだわりや変なプライドを捨てることです。
凝り固まった考え方などは感受性を高める上で大きな障害となります。
柔軟な考え方と視点で、自分とは違う考え方や知らないことを発見する喜びを楽しみながら、訓練してみましょう。
■まとめ
感受性を豊かにすることは、俳優になるための最初のライセンスといっても過言ではないぐらい大事なことです。
何度も言いますが、人の気持ちを理解できない人に、人の気持ちを演じることはできません。
感受性を高めるのに年齢は関係ありません。
ただ、大人よりも子供の方が感受性が豊かだったりします。
それは、純粋で自分にも他人にも正直だからですね。
そして何事にも好奇心旺盛で興味津々だからでもあります。
あなたも今日から、出来る限り自分にも他人にも正直に、そして何事にも興味を持って日々過ごしてみてください。
他の人には感じ取れないことをあなたが感じ取れるようになれば、自然と、他の人にはできないあなただけの表現で演技することができるようになります。
「感じる心」は真似できませんからね。
感受性を高める4つの方法
- 散歩する(興味関心を持って。雨天決行)
- 読書する(文字ばかりでなく絵本なども)
- 映画、舞台、音楽、美術鑑賞(さまざまなジャンルを)
- 人間観察(興味関心を持って)
この中でも特に映画や舞台は、これからあなたが仕事をする直接の場ですので、好き嫌いにこだわらずできるだけ幅広いジャンルの多くの作品を観るようにしましょう。
映画は、映画館でもサービスデーに観れば多少は安く観ることもできますし、動画配信サービスであれば低額の月額料でいくらでも観放題になりますし、舞台もたくさん観ようと思うと観劇料が高くなってしまいますが、こちらも観劇三昧などオンラインの舞台配信サービスを利用すれば低額で家にいながら観放題なのでできるだけ多くの作品を観て感受性を高めましょう。