「俳優はアルバイトなんてするな!」
これは自分が過去に受けた俳優ワークショップの中で映画監督に言われた言葉です。
「役者ならバイトしてちゃダメだよ。もっと頭使ってちゃんと仕事しないと」と、言われました。
どういうこと…❓❓
「いやいやいや、バイトしないで役者を志すって…それができたら最高だけど生活があるし現実的に無理っしょ…」
と、そのときの僕は思いました。当然ですよね(笑)
私も上京組なんでバイトしないと生きていけないです????
もちろん、そうですよね????
俳優として売れていないからこそアルバイトしないと生活できないわけですからね。
でも、ワークショップの打ち上げの場で監督が話してくれたその言葉の真意には、実はすごく深い意味があったんです。
まさに、一生エキストラや端役で終わるか、主役や物語の中心人物を演じる俳優になれるかの分かれ道とも言える大事な言葉です。
そんなにですか❓❓
ちょっと言い過ぎかも(笑)でもほんとに深い話なんです????
■「アルバイト」と「仕事」の違いは、「エキストラ」と「主要キャスト」の違い
監督の言う「アルバイトと仕事の違い」についての真意をお伝えする前に、最もわかりやすい面白い実例があるので1つ紹介します。
俳優を仕事にする上でも大きなヒントになる考え方です。
これは知人の実話ですが、ある小さな飲食店でキッチンに1人とホールにアルバイトさん2人の3人でお店をやっていました。
でも、繁盛して3人では回らないくらいに忙しくなったのでキッチンに2名とホールに2名のアルバイトさんを追加募集しました。
その時にキッチン希望で面接に来た人のお話です。
普通、バイトの面接と言うと何を持って行くでしょうか?
…履歴書…かな❓
最初はだいたい履歴書を持っていきますよね。※今は履歴書不要なところも多いですが。
でも彼は違いました。
彼が持ってきたものは、彼が考案した料理の「レシピ」でした。
彼は、それまでにお客さんとして何度か店に来たことがあったらしく料理や店の雰囲気を気に入ってバイトの応募をしたという事でした。
そして面接中に、「図々しくてすいません」と言いながらレシピを取り出した彼は、
「この店の雰囲気や他の料理との相性もよくてコストパフォーマンスも良いと思うレシピを自分なりに考えてきたので、一度目を通してもらえませんか?」
と言いました。
図々しい奴だと思いますか?
僕はむしろ面白いな人だなと思いちょっと感動しました。
そして彼は採用になりました。
ちゃっかりレシピも採用(笑)
レシピも採用ですか(笑)
あなたがお店の経営者ならどうでしょうか?
こういう人って頼もしくないでしょうか?
「時給がいくら」「シフトは融通が利く方がいい」など、本来なら自分にとっての条件が主体になって当然です。(生活がかかってますからね)
頼んでもいないのにお店全体の事やお客さんの事を積極的に考えられる人というのはなかなかいません。
これを俳優に置き換えるなら、頼まなくても作品全体の事や観客、視聴者の事まで積極的に考えている人と同じです。
彼は今では、店のほぼ全権を任されている頼もしい幹部スタッフです。
すごい❗️レシピを持って行くなんて考えもしませんでした????♀️
そうですよね。普通はなかなかいませんよね????
そしてこの実例こそが、冒頭の監督の言葉、
「俳優はアルバイトなんてするな!仕事しろ!」
の核心をついたエピソードなんです。もうこれが答えだというくらいに。
・与えられる人ではなく任される人になれ
たとえばアルバイトさんが
「与えられた事を言われた通りにこなす人」 であったとしたなら、
正社員や幹部というのは、
「常に自ら新しい提案や改革をし続け、与えられた事を何倍もの結果に結びつけ、お客様に対しての責任と義務、そして使命を全うする人」
です。(で、あるべきです。)
もちろん、正社員の中にも言われたことをこなすだけの人もいますし、アルバイトの中にも正社員以上に積極的に考え仕事に取り組んでいる人もいますが。
監督の「俳優はアルバイトなんてするな!仕事しろ!」という言葉は、言い換えれば「アルバイト思考」で仕事をするな、という意味に近いです。
つまり、与えられたことを、言われたとおりにこなすだけの仕事のやり方をするな、と。
あぁ~❗️なるほど…❗️
俳優に置き換えて考えてみましょう。
役というのは「与えられるもの」ではなくて「任されるもの」です。
キャスティングする側が「この役を任せてみよう」と思える俳優にならなければいけません。
…任されるもの・・・たしかに。
でも実際には、役を「与えてもらう」と考えている俳優が多いです。
ここでもう一つ、実際の現場の声をご紹介します。
これは舞台の現場で演出家が言っていた事です。
「こっちが言った事しかできない役者は再現芝居しかできない。せっかく1つの役を任せたんだから、良い意味で俺の想像を越える何かを見せてほしいんだよね。俺は観客の代表なんだから」と。
想像通りだと物足りないって…なんかわかる気がする。
きっとそれは、観ているお客さんも同じじゃないでしょうか。
たとえば映画などを観て、簡単に予想できる展開やストーリーで、予想通りの演技しか観られなかったらつまらなくないでしょうか?
どこかで自分の予想を裏切り、でもしっかりと期待以上のものを観せて(魅せて)くれる。
そんな作品や俳優にドキドキしながらお客さんは観るのではないでしょうか。
確かにそうですね❗️良い意味でちょっとした驚きも欲しいというか。
そうですよね????
これから先たくさんの監督や演出家などと関わっていく事になると思いますが、その意識を持って取り組んでいくだけで「絶対に」必要とされるはずです。
仕事とは「与えられるもの」ではなくて「任されるもの」
監督や演出家に頼りきるのではなく、反対に、「この役はあなたに任せたい」と言ってもらえる為の工夫と行動を考えていきましょう。
・主役としての意識と思考を持ってないと「主役」はできない
「俳優はアルバイトするな!仕事しろ!」という言葉の真意は、本当にアルバイトを辞めろという意味ではなく「アルバイト思考」で働くのをやめろということです。
アルバイト先では自分の事情が最優先という人が圧倒的に多いですよね。
休みやすいというか、芝居と両立しやすいように融通が利くというのが第一条件で働いてますね????
もちろん時と場合によって自分の絶対条件を守ることは大事なことですが、自分の事だけを最優先に考えて働いていては、重責を担うポジションはなかなか任されにくいです。
反対に、たとえアルバイトであってもリーダーや社員、または店長、経営者と同じような意識で全体の事(売上に至るまで)を考えて行動を取れる人がいればどうでしょうか?
間違いなく必要とされるでしょうし、頼りにされて重要な仕事を任されるのではないでしょうか?
間違いない❗️
これは、俳優の世界も同じです。
エキストラや端役の意識、思考だけしか持っていない人に物語の中心になるような責任重大な役は任せにくいですよね。
というか、そのような意識では主要キャストは務まらないでしょう。
でも、主役や主要キャストと同じように自分の役はもちろんのこと、作品に対しての責任感を持って全体を考えて行動してくれる人がいれば必ず頼りにされます。
そういう人はいつか主役や主要キャストを任される可能性が高いです。
でも実際には監督や演出家に「どうすればいいですか?」と最初から「与えられること」を求める人が多いです。
私もそんなタイプかも…
主要となる1つの役をしっかり任される俳優になりたいのであれば、「これはどうですか?」とまずは自分から提案したり提供する意識を持っておきたいところですね。
「自分はこの作品の1つの中心的な軸なんだ」という自覚と意識で取り組むことです。
仕事に対する意識や、考え方、目配り、気配り、心配りは、バイト先や日常生活の中でも養う事ができます。
アルバイト先でも、常に自分が中心的な軸なんだという意識を持つ訓練だと考えて行動してみるとアルバイトをする意味も違ってきますよね。
確かに日ごろから意識をしていないと、なかなか急には無理ですよね????
そうですね。意識の問題なので、アルバイトの人に急に明日から店長を任せるのは難しいのと同じですね????
どんな場面でも自分が中心軸になって物事を考えられる「思考力」、そして、主軸となって物事を進める「行動力」を、日常生活の中でも意識的に養っていきましょう。
■まとめ|自ら仕事を生み出す俳優の実例
最後にもう1つだけ俳優仲間の実例を紹介します。
俳優仲間にこんな人がいました。
彼女は小さい小劇場で朗読劇などを主として活動していたんですが、当然、それだけでは生活はできません。
そこで彼女は、図書館で童話や絵本、戯曲などを借りてきてそれを持って福祉施設や老人ホーム、病院へと自ら出向き、
「私は俳優をしていて普段は朗読劇などを公演しています。そこで、朗読の素晴らしさを少しでも提供したいと思いまして、ボランティアで読み聞かせに回っています。一度、機会をいただけませんか?」
と、次々と回っていったんですね。
すごい行動力…
当然、ボランティアなので収入は得られません。
彼女は「最初はそれでいいのー」と言って笑い飛ばしていました。
そうした活動をしばらく続けていると「謝礼をお渡しするのでまた是非来てもらえますか?」と、気に入っていただけた施設から次の依頼が入るようになりました。
そして、少し時間はかかりましたがいつの間にかそれで生活ができるくらいになっていました。
すごい❗️❗️
今回紹介した2つの実話は、職種は関係なくその人の意識と行動力次第でゼロから自分の仕事を作り出すことができるという良い例ですよね。
人に「任せる」のではなく、人から「任される」人になる。
そのために大事なのが「自分が中心の軸という意識を持って行動する」ことです。
それこそが「俳優はアルバイトするな!仕事しろ!」という言葉の真意です。
- 「仕事」とは「与えられるもの」ではなく「任されるもの」「生み出すもの」
- 実際のポジションは関係なく、自分が中心軸(主役、主要キャスト)のつもりで取り組め
たったこの2つの意味が凝縮された言葉です。
今日からは日常生活の中でも、
- 「与えられる」のを”待つ”のではなく、自分から「提供する(与える)」
- 常に自分が中心軸(主役)という意識で、物事を考え行動する。
是非この意識を頭の中に置いて、主役や中心人物を「任される」俳優になりましょう。
そんな頼りになる人を周りは放っておきません。
必ず必要とされ、重要な役割を任せられるでしょう。
なんか今日からアルバイトも頑張れそうです????
本当にアルバイトするな!って意味じゃないですからね。俳優活動に集中するためにもアルバイトは大事です。頑張りましょう????