これから俳優を目指す「演技未経験者」や、まだ始めたばかりの初心者に向けて、 演じるために何をやればいいのかを簡単に解説します。
脚本を受け取ってセリフを覚えるだけが演技ではありません。
セリフを覚える工程というのは、演じるうえでの数ある作業のうちの一つにすぎません。
演じる上でどのぐらいのやることがあるのかを一覧にして解説するので、よければ参考にしてください。
■演じるためにやること一覧
まず演技というのは以下の記事でも解説していますが、三つの過程にわけられます。
- 準備
- 作り込み
- 盛り付け
あれ?と思った人もいるかもしれませんが、そうです、演技を視聴者や観客に提供するまでの工程は、料理をお客様に提供するまでの工程と似ています。
役を作りこんでいくためには、まず準備をしなければいけません。
その準備段階でやることを簡単にまとめると、以下のような内容になります。
- 脚本を読む
- 書かれている情報をすべて書き出してみる
→役の履歴書を作ってみる - それぞれの登場人物との関係性をよく考える
- 実際に準備しなければいけないものがあれば準備する
●脚本を読む
当然ですが、まずは脚本を読み込んで物語全体を把握する必要があります。
初見で(初めて)台本を読むときのポイントは、自分の役がすでに決まっていたとしても、自分の役は意識せずに、まずは全体を見渡すイメージで読んでみることです。
ある役の視点から偏った読み方をするのではなく、本当に何も意識せず、伝わってくるものをストレートに受け止めるように読むだけで作品全体の見え方が違ってきます。
●書かれている情報をすべて書き出してみる
演じるまでの工程に慣れてきたり、自分のやり方みたいなものが出来上がってくればその必要はないかもしれませんが、 まずは頭を整理するためにも脚本から読み取れる情報を一旦全て書き出してみることをおすすめします。
たとえば、
- 時代
・作品の背景となる世の中ではどんなことが起こっている?
・史実の場合などは、その時代に沿った社会風潮があり、人々の生活にも大きく影響している場合がある。演じる上でそうした時代考証や社会情勢などが必要かもしれない。
・流行っているものも違う。
(例)歌、ファッション、持ち物など。流行のファッションなどは衣装選択にも大きく影響する - 季節
- 身の周りの出来事
- 自分自身(演じる役について)のこと
(例)年齢、血液型、性格、仕事、経験した出来事
など、自分が役を演じるうえで絶対に外してはいけないことや、作品全体、または役の設定に大きく左右するであろう情報をまとめる感じで書き出してみます。
・役の履歴書を作ってみる
書き出したすべての情報をわかりやすくまとめるための一つの方法として、<役の履歴書>を作るという方法もあります。
- 生年月日
- 血液型
- 家族構成
- 身長
- 体重
- 特技
- 趣味
- 好きな食べ物
- 嫌いな食べ物
- 好きな人のタイプ
- 誰にも言えない秘密
- 印象に残っている出来事
- 影響を受けた人
など、自分のオーディション用のプロフィールを作るのと同じような感覚で、自分が演じる役のプロフィール(履歴)を作ってみる作業です。
この作業は必ずしも必要ではありませんが、このようにして一つ一つ書き出してまとめてみることで、人物像が立体化され、イメージしやすくなります。
なので、超初心者のうちはやってみると面白い発見がたくさんあると思います。
●それぞれの登場人物との関係性をよく考える
あなた自身にも、先輩、後輩、知人、友人、身内など、周りにたくさんの人がいると思いますが、一人一人、その人との関係性によって距離感が違うはずです。
同じ「知り合い」というカテゴリーに入っていても、挨拶を交わすだけの人や、顔を合わせば立ち止まって少し世間話をしたりする人もいるかもしれません。
また、同じ「友達」でも、この人には恋愛の相談はできても学校や仕事の相談はできない、とか、人に言えないような深い相談事はこの人以外できない、人によってそんな違いがあるかもしれません。
そうした一人一人との微妙な距離感の違いが、人間模様となるわけですね。
なので、脚本を読んで自分(演じる役)が関わる他の登場人物との関係性や距離感をしっかりとイメージしておくと、演技にリアリティと説得力が出ます。
●実際に準備する必要があるものは準備に入る
これは、たとえばあなたがぽっちゃり系だとして、演じる役が「ほっそりやせ型」だという設定なら、ほっそりやせ型になる必要がありますよね。
また殺陣やアクション系で「強い」設定の役だとしたら、ある程度は体を鍛えておかないと、役の設定に説得力や真実味が欠ける結果になってしまいます。
なので、自分が演じる役にとって必要な準備は、早い段階から準備に入るようにしましょう。
■役作り
さて、準備が整えば、次は役を作りこむ段階です。
いわゆる「役作り」というやつですね。
準備段階でしっかりと収集した情報をもとに、脚本という紙に描かれていた紙面上の人を、立体的な人間へと作り込んでいくわけです。
ただ、演じる役や作品の内容などによっても実際にやることが違ってくるので、役作りのポイントなどはまた別の記事で紹介します。
とにかくこの段階では、相手役や他の登場人物などと実際に言葉を交わしたり触れあったりしながら物語(作品)を深めていきます。
■見せ方を考える
作ったものをより良く見せるための盛り付け、飾り付けの段階ですね。
この段階も、その時その時でやることや最善の方法が違ってくるので、ポイントなどはまた別記事で紹介しますが、より効果的に見せる(魅せる)工夫をしましょう、ということです。
もちろん、舞台でも映像でも、監督や演出家がいらっしゃるので、見せ方も考えながら同時に作り込んでいくパターンもあります。
なので、明確に工程がわかれている時ばかりではなく、「作り込み」と「盛り付け」が同時進行することも多々あります。
ただ、覚えておきたいのはしっかりと中身を作り込むだけではなくて、その作り込んだものをより効果的に、視聴者や観客の心の中に、印象として残る見せ方を工夫することが大事だということです。
以下の記事でご紹介した、演技を効果的に見せるために使える7つのテクニックなどもよければ参考にしてみてください。
■まとめ
簡単に大きくまとめましたが、演じるためにやるべきことは上記のような内容になります。
初心者が特に意識したいのは、最初の準備です。
まず、役を作りこんでいくために、何よりも準備段階を一番大事に考えましょう。
料理を作る時に、必要な材料や調味料の分量もわからなければちゃんと作れないのと同じで、しっかりと準備するものを準備しなければ役作りもうまくいきません。
なので初心者のうちは、台本の読み方など、準備段階を何よりも大事に考えておきましょう。
そして、台本の読み方は映画やドラマや舞台に出演する予定がなくても、日頃から勉強することができます。
舞台や映画の脚本は探せば売っていますし、脚本ではなくても小説でも大丈夫です。
「全体的に理解するための読み方をして、実際にそこに書いてある情報を書き出してみる」などは今日からでも始められる、演じるための勉強法ですので、ぜひ取り組んでみて下さいね。