あなたが俳優として、
他の誰にも負けないところはどこですか?
ワークショップでこの質問をすると、多くの人が答えられません。
聞かれてから考える人もいます。
どうでしょう?
「自分の《強み》をわからずに、何をアピールするんだろう?」と思いませんか?
でも実は多くの人が、自分の俳優としての《強み》を意識していないんです。
■売る側、使う側が知りたいのは特徴
先日、これから俳優を目指したいという人を、知り合いの大手芸能事務所のマネージャーに紹介しました。
紹介と言っても、所属させてくれるように頼むほどの権限は僕にはないので、本格的に俳優活動を始める前にリアルな業界の話を聞かせてくださいとだけお願いしました。
紹介した人には「せっかくの機会だから自分のプロフィールを持ってオーディションのつもりで来てね」と言っておきました。
そして、当日。
顔を合わせて5分でマネージャーから「申し訳ないですが、これが本当のオーディションなら今の時点で不合格ですね」と言われてしまいました。
なぜか?
決め手となったポイントは、
- 服装のコンセプトを考えていなかった
- プロフィールの写真のコンセプトも考えていなかった
- 目立つ特徴がないうえに、自分の強みも考えてもいなかった
大きく言うと、以上3点でした。
その中でも一番、重要なポイントは「目立つ特徴がないうえに、強みも考えてもいなかった」でした。
やる気はあって当たり前なので「やる気はあります!」「一生懸命やります!」「何でもやります!」は何のアピールにもなりません。
そして、それは俳優としての強みにもなりません。
俳優やタレントというのは、言い方を換えれば「商品」です。
知りたいのは、その商品の特徴です。
他の商品とどんな違いがあって、どんな強みがあるのか?
売る側の人間としては、それを一番知りたい。
そこを自分でアピールできるようになってくること。
それが最初の「やる気」であり「一生懸命」です。
なので、そこの部分のやる気が今の時点では感じられません。
キツいようですが、このように言われました。
でも思いっきり正論ですよね。
■「普通」の人では強みにならない
その時の話の中で出た、誰にとってもためになる話をシェアします。
まず、「服装のコンセプト」と「プロフィール写真のコンセプト」についてですが、多くの人はそのコンセプトが弱いとのことでした。
たとえばオーディションで主婦の役という設定なら、なんとなく主婦っぽく見えるような服を着ていくとは思いますが、「なんとなく」「っぽい」ではよくありません。
なぜなら、絵に描いたような主婦像が表現できていればそれは1つの特徴になるかもしれませんが、「なんとなく」では他の人にはない「あなただけの特徴」になりにくいからです。
たとえば、人は住んでいる土地や環境によって、土地柄的な雰囲気などが違ったりします。
テレビで巣鴨のおばさんのインタビュー映像などを見ると、身なりや雰囲気で「巣鴨っぽいな」と感じたりすることもありますよね。
電車に乗ったときも、それぞれの路線でなんとなく乗っている人の雰囲気が違って感じることってありませんか?
もちろん、もっと大きく分類すればその違いはさらにわかりやすくなります。
沖縄の人には「沖縄の人独特の雰囲気」がありますし、大阪の人には「大阪の人独特の雰囲気」があります。
そのように、住んでいる場所、土地柄、環境などで人間の持つ雰囲気などが違ってきます。
「主婦役の設定」と書かれているのと「田園調布に住んでいる主婦役の設定」と書かれているのでは、連想するイメージも違うと思います。
住んでいる場所も書かれていれば、より明確にイメージするのではないでしょうか。
オーディションでは、そうしたイメージをできる限り具体的に自分で表現して行くことが大事だと言っていました。
- 年齢
- 住んでいる場所
- 戸建ての住宅なのかマンションなのか
- 家族構成
- 職業
主婦という設定しか決まっていなくても、最低このくらいは自分自身で設定を決めることです。
- 30才
- 田園調布
- 3億円の戸建ての豪邸
- 夫、子供3人
- ジュエリーブランド経営
これだけ設定が決まっていたらイメージも明確になりますよね。
もっと言えば「子供3人」ではなく、「子供:長男16歳、長女13歳、次男8歳」と書かれていればもっと具体的にイメージできると思います。
身につけるアイテムも限定されると思います。
それでイメージ通りに完璧に仕上げていけば、「なんとなく」「っぽい」ではなく、もうそこに住んでる主婦にしか見えないということになります。
他の人よりも差をつけようと思うと、そのくらいの「インパクト」が必要です。
「プロフィール写真」でも同じで、多くの人が「なんとなく爽やか」で「なんとなく清潔感」があって…というような写真が多いです。
でも特に爽やか路線を狙っているわけでもなく、どんな役にでも馴染めるように一番ニュートラルな状態の写真を持ってきているだけといった感じです。
でもそれでは「普通」すぎて何のインパクトもありません。
マネージャーいわく、「それだったら、飛び散る汗なんかを演出してレモンでもかじりながら爽やか路線を狙った写真を持ってきた方がインパクトがあって目にとまる」と(笑)
つまり、何も狙わず、何の工夫もしていない写真をプロフィール写真として使っている人が多いということですね。
服装と同じで、3億円の豪邸に住んでいる田園調布のセレブ主婦だったとしたら、本当にそういう人が自分のプロフィール写真を撮るとしたらどんな写真を撮るでしょうか?
普通に正面を向いただけの履歴書用の写真みたいな構図ではきっと撮りませんよね。
実際にそのセレブ主婦が撮るであろう写真を準備してオーディション会場に持っていって、「田園調布に住んでいるセレブな主婦なら誰にも負けません」といった方が説得力がありますし、選ぶ側も納得するでしょう。
悪役の俳優や強面の俳優は多いのでその路線でいくのはちょっと難しいかもしれませんが、それでも強面に自信のある人なら、もう見ただけで「本職の人?」「もしかして元々そういう人?」と怖がられるくらいの身なりをして、そういう写真を持っていった方がよほどインパクトがあります。
悪役専門芸能事務所の高倉組の俳優(組員)などを見れば一目瞭然です。
悪役が必要になったときには確実に需要があるだろうなと思いますよ。
強面でなくても、突き抜けた人の方が確実に需要は高いです。
プロフィール写真に上記のイラストのような写真が貼られていたら、確実に目に留まると思いませんか?(笑)
もちろん、限られた役だけにはなりますが確実に需要もあると思います。
最初の突破口としては限られた役だけでもいいので、とにかく人よりも突き抜けて「この役は他にいない」と言わわれるほど自分のポジションを確立することです。
俳優としての自分のポジションを確立し認知度も高くなってくれば、更なる自分のいろんな面を出していくことも可能なので、まずは第一関門を突破することに全力を尽くしましょう。
目立った特色もなく「普通」なだけでいいのなら、そもそもオーディションを開催する必要さえなくなってしまいます。
オーディションをやる意味とは、求めている役にずば抜けて近い人や合いそうな人、それでいてインパクトのある人を探したいわけです。
そのインパクトを与える自信のある状態でオーディションに臨むようにしましょう。
■コンプレックスこそ俳優にとっては強み
あと、誰でも1つや2つくらいはコンプレックスを持っていると思います。
- 体型に自信がない
- 薄毛
- 体臭
- 異常に緊張する
- 肌の状態がよくない
など、さまざまあると思います。
それらはできれば人には見せたくないものであったり、言いたくないことであったりするかもしれません。
でも俳優で売れたいなら、それらをさらけ出す覚悟を持った方が売れやすいです。
芸能界にはイケメンや美女が山のようにいます。
そんな中で、すれ違うだけで誰もが振り返るくらいの容姿に自信がなければ、見た目で勝負するのは不利になります。
では、どの部分で勝負するのか?
俳優の世界では、薄毛や肥満といった特徴も役に活かせる強みとなります。
誰よりもその点で勝っていれば、そういった役があったときには他の誰よりも適役です。
むしろ、役のためにあえて太る俳優なんてたくさんいますし、俳優を職業にしている人には当たり前のことなんです。
なので、イケメン、美女で売っていくのでなければ、どの部分で人より突き抜けられるかを考えてみましょう。
■まとめ
売る側(芸能事務所やマネージャー)も、売り込むときに「こういう役では、他の誰よりもインパクトがあります」と言える俳優の方が当然、売り込みやすいと言っていました。
たしかに自分がマネージャーの立場だったとしたら、特徴や突き抜けたものがない人を売り込むのはなかなか難しいですよね。
「私は演技力で勝負する」という人もいるでしょう。
でも、芸能界には演技の上手い俳優が山のようにいます。
ちなみに一般的には「売れていない」俳優の中にも、演技の上手い俳優はたくさんいます。
そうした中で第一線で活躍している俳優というのは、演技力だけでなくさらにもう一段階何かしらの突き抜けたものを持っている人が多いです。
「普通」をセールスポイントにしてもいいですが、だとしたら、誰がどう見ても「誰よりも一番普通」に見えれば「強み」になります。
演技が上手いのは当然のことと捉え、もう1つ突き抜けるために、どこの部分でどんな風なインパクトを人に与えるのかを考えてみましょう。