「駆け出しの俳優ってちゃんと生活できますか?」
「下積みの俳優ってみんな貧乏なんですか?」
「駆け出しのうちって出演料などはどのくらいもらえますか?」
「どうすれば俳優で食べられるようになりますか?」
「相場や平均を見たんですが本当にそんなにもらえるんですか?」
といった俳優の収入に対する質問をよくいただくので、まだ売れていない俳優のリアルな収入事情をお答えします。
■売れない俳優の収入の源はアルバイト
正直なところ、駆け出しの俳優やなかなか芽が出ない俳優のほとんどが、俳優業だけで生計を立てることはできません。
アルバイトで収入を得ながら俳優活動をしています。
俳優活動している人がやっているアルバイトは以下の記事で紹介しているのでよければ参考にしてください。
■売れていない俳優の給料形態は?
売れていない俳優と言っても線引きが難しいので、ここでは、
「売れていない=俳優業1本で生計を立てられていない」
というのを1つの基準としてお話します。
これを基準とした場合、まったく生活できないレベルから生活するのがギリギリ厳しいレベルまで大きな開きがあります。
なのでレベル次第では多少話が違ってきますが、ここでは、これから俳優を目指す人など俳優業1本ではまったく生活できないレベルの人目線で話を進行したいと思います。
まず、俳優がもらうギャラ(給料)の形態は事務所に所属しているかしていないかによっても違いますし、映像仕事か舞台仕事か、など仕事の内容によっても違います。
・事務所に所属している場合
芸能事務所に所属している場合は、基本的にはすべての仕事は事務所を通して受けることになるので、俳優は事務所からギャラをもらう形になります。
その場合、ギャラの一部がマネージメント料として事務所の取り分になります。
その配分は各事務所の取り決めによって違いますが、マネージメント料として一般的なのは20%~50%になります。
俳優 | 事務所 |
---|---|
80% | 20% |
70% | 30% |
60% | 40% |
50% | 50% |
だいたいの事務所がこの間くらいだと思いますが、感覚的に言えばマネージメント料が20%だとかなり良心的というイメージで、50%よりも上だと「ちょっとヤバい…」感じがします。
一般的によく聞くのは「70%:30%」か「60%:40%」が多いです。
・フリーの俳優の場合
フリーで活動している俳優の場合はマネージメント料が発生しないので100%が自分の取り分になります。

じゃあフリーで活動した方がお得ですね!





それが、そうでもありません(笑)
たしかにギャラの配分だけを見ればお得ですが、スケジュール管理や関係者との直接のやり取りなどもすべて自分でやるのは大変ですし、仕事として考えれば会社の後ろ盾があった方がクライアントからしても安心です。
ある程度、実績や人脈ができて業界内での信用が得られたうえでのフリー活動ならいいと思いますが、まったくの駆け出し俳優がフリー活動するのはよほどのガッツがなければおすすめできません。
・映像ギャラと舞台ギャラの違い
映像の仕事と舞台の仕事のギャラの違いを解説します。
これも、その時々の仕事の内容によってまちまちなので、一つの例として参考にしてください。
映像と言っても商業映画なのか自主映画なのか(またはTVドラマなのか)によっても違いますし、舞台でも商業舞台と小劇場などでは全く別世界だと言ってもいいくらい違います。
もちろん同じ作品でもそのときに配役される役によってギャラや待遇は全然違うので、その辺りは頭に置いておいてください。
まず駆け出しの俳優がすぐにでも出れる可能性が高いのは、自主映画や小劇場の舞台ですが、自主映画などではギャラは交通費程度が一般的でしょう。
よくあるのは「交通費と食事は用意します」といった感じですね。それすらも出ない場合もあります。
また、小劇場で言えば「1ステージ〇〇〇〇円+キャッシュバック」というような感じで、「公演(ステージ)回数×〇〇〇〇円」と「動員人数×〇〇〇円」が自分のギャラになる場合が多いです。
でも小劇場にはチケットノルマがある場合もあり、ノルマを達成できなければ自分でお金を支払って出るようなシステムもあります。



それは過酷…
それに比べて商業映画や商業舞台などはちゃんと固定の出演料がもらえます。





もちろん、その額は作品ごとによって違いますが。
ある程度の実績や知名度がある俳優であれば、その俳優自体に「相場」や「平均単価」がありますが、本当に駆け出しのうちは出演料もさまざまです。
自分の経験談で言えば、全国放送されているドラマに出演した際に12時間の待ち時間があったうえに撮影には16時間もかかってギャラは16,000円という現場があったかと思えば、現場に到着するなり待ち時間なしで撮影して15分で撮り終わって45,000円のギャラという現場もありました。
スポンサーの大きさやどこの局なのか、公開規模、制作費、などさまざまな条件によってその時々の予算も違うので駆け出しのうちはあまり額は気にしない方が良いかもしれません。
ギャラの交渉や待遇のことも考えて、芸能事務所に所属しておく方が安心だと思います。
■ギャラの支払い
ギャラの支払いのタイミングについては、基本的には映画やドラマなど映像仕事の場合は撮影をしてから3ヶ月後くらいが一般的です。
もちろんこれは各事務所の取り決めにもよりますが、基本は制作会社から事務所に入金があってからのタイミングになるので2~3ヶ月後になることが多いです。
同じ映像でも自主映画などは撮影当日に現地でもらえる場合も多いです。
また1ヵ月間の公演があったりする商業舞台では、その前の稽古期間も含めアルバイトをする時間もありません。
これも事務所によって違うと思いますが、僕が所属していた事務所ではそうしたアルバイトのできない期間や地方公演など現地での生活のことも考えて、公演月の15日と月末の2回に分けてギャラを支払ってくれていました。
小劇場などでは、公演が終わってから後日「精算会」があり、そのときに動員数によるキャッシュバックなども含めてもらえる感じです。
■売れない俳優に相場はない。仕事がなければ収入ゼロ
「俳優の収入の相場ってどのくらいですか?」
という質問は本当に多いですが、相場も平均もありません。
というのも、仕事が入ってこなければ俳優は収入ゼロだからです。
いくら自主制作の映画や舞台に出演して、俳優活動をしていたとしても収入は限りなくゼロです。
少し有名なドラマや映画に出演したとしても、あとが続かなければ生計を立てていくのは難しいです。
つまり、コンスタントに仕事が入ってくるようになるか、1本の仕事の単価が相当高くならないと安定して生計を立てていくことはできません。
駆け出しの俳優に限って言えば、年収10万円にも満たない人も多いですし、年収100万円などはかなり稼いでいる方だと思います。
もちろん、一線で活躍してしている一流の俳優の中には年収で「〇億円」稼ぐ人だっているので夢がある業界ですが、駆け出しの俳優の現実はそんなもんだと知っておくのも大事だと思います。
■ギャラを高くするために必要な5つのこと
早く金銭面で安定して稼げるようになって、安心して俳優活動に取り組みたいですよね。
そのために知っておくことを5つ紹介します。
・基本的には映像の方がギャラは高い
まず、基本的には舞台の仕事よりも映像の仕事の方がギャラは高いです。
1本1本の単価というよりも、その仕事に費やす時間に対しての額という意味では映像の方が割は良いですね。
・知名度を上げる
俳優として安定したければ早く知名度を上げることも大事です。




知名度って認知度とはまた違いますか?





違うんですよ。ここで大事なのは、認知度ではなく知名度です。
世間一般的にはもちろん、業界内でも言えることです。
やはり芸能界でも人と人とのつながりや人脈がとても大事です。
人から選んでもらうためには、自分のことをよく知ってもらい信頼関係を築くのが一番早いです。
たとえばあなたがどんなに良い演技をする人でも、そのことを多くの人が知らなければ「何をしている人?」「どんな人?」の枠から抜け出せませんよね。
つまり、あなたが「すごく良い演技をする人」だということが多くの人に知ってもらえたら、仕事も任されやすくなるということですね。
・とにかく人前に出る
これは知名度を上げることに繋がりますが、駆け出しの俳優はとにかく人前に出ることが大事です。
中には小劇場など小さい規模の舞台活動をやっていて、たまたま観に来た大物プロデューサーなどの目に留まって大きな仕事につながったという俳優もいますが、それは宝くじやギャンブルと同じで「当たればラッキー」ぐらいに思っておいた方がいいです。
そういった舞台活動などと同時に、やはりもっともっと多くの人の目に留まりやすい場所に行くというのが大事です。
わかりやすいところで言えば、
- 一般公募しているオーディションを積極的に受ける
- 舞台だけでなく自主映画など人の目につくことはなんでもやる
- YoutubeやSNSなどで何らかの発信をしてみる
など、とにかく人に「あなたが誰で」「何をしている人」「どんな人」ということを、一人でも多くの人に知ってもらいましょう。
・話題を作る
人に知ってもらうためには、話題を作るのも大事です。
言い方を換えれば「注目されることが大事」ということです。
「注目される」を誤解した人に多い手法として「売名行為」や「炎上商法」などがありますが、目立つことをやれば何でもいいという意味ではありません。
たとえば舞台公演のときに自分の知り合いにLINEで公演案内を送るだけよりも、お金をかけてでもテレビCMやウェブCMを流した方が注目されます。または駅などにポスターを貼ってもらうなどした方が注目されるし話題にもなりますよね。




たしかに!
話題をつくるというのはそういうことであって「目立てばなんでもいい」わけではないので、そこは気をつけましょう。
・ファンをつくる
これも大事なことですが、「知り合いを増やす」というのと「ファンを増やす」といのはまったく違います。
小劇場などの客席は80%~90%がほぼ知り合いというような割合の場合も多いです。
知り合いでも純粋にファンならいいですが、「付き合い」で観に来ている人が多いのも現実です。



私も付き合いで観に行くことが圧倒的に多い…





きっとそんな人が多いです。
映像仕事でも舞台仕事でも、俳優というのは突き詰めれば「人気商売」です。
どんなに演技がうまくても人気がなければ売れません。
「人気者になる」=つまりファンが多い俳優というのは当然仕事も増えて安定して収入を得ることができるようになるので、「ファンを増やす」ということを頭に置いておきましょう。
■まとめ
売れない俳優の収入状況をお伝えしましたが、安定して仕事が続くようになるまでは俳優1本で生計を立てるのは難しいです。
待っていれば誰かが必ずあなたを見つけてくれる世界ではありません。
むしろ、全国に俳優を目指している人は何万人といる中で、積極的に行動を起こしていかなければ埋もれてしまいます。
まずは自分自身の魅力を磨きながら俳優としてのスキルアップに努め、積極的に舞台活動したり、一般公募のオーディションを積極的に受けるなどして、どんどん人前に出て知名度を上げていきましょう。