「オーディションってどんな服を着ていけばいいんでしょうか?」
「タブーってありますか?」
「基本的にこんな感じの方がいいとかあったりしますか?」
「服を選ぶときの何かポイントは?」
「ワークショップって動きやすい服装でいいんでしょうか?」
など、オーディション時やワークショップのときの服装について、たくさんの質問をもらいます。
服を選ぶときのポイントは、あります。
以前、実際のオーディション会場で、監督からの一番最初の質問として、
「あなたが今日来てきた服のコンセプトを教えてください」
と質問され、ほとんどの人が答えられなかった場面に遭遇しました。
なぜ監督はそのような質問をしたのでしょうか?
- 初めて会う監督やプロデューサーに対して、何を見てもらおうと思ってその服を選んできたのか?
- 自分のどこを見てほしいと思っているのか?
そのようなことが知りたくての質問でした。
オーディションなどは監督や演出家、プロデューサーといったキャスティングの権限を持った人たちがいて、俳優を目指す人にとっては大きなチャンスの場です。
そこで自分の俳優としての一番の魅力を見せようとするのは当然ですよね。
そうした大きなチャンスの場で、初めて会う人に自分という俳優の存在を知ってもらうために、また、俳優としての自分の魅力を知ってもらうために、その服を選んできたのは何故か?
・・・。
答えられない人は全員落ちました。
なぜなら、
「初めて会う人に自分の魅力を伝えようという意思がない」
「俳優として伝えられる魅力がない」
「一緒に仕事をしたいと強く願っていない」
「ちゃんと見てもらおうという意識がない」
「俳優なのに自分を表現できない」
「意欲を感じない」
このような理由からでした。
もちろん、だからといって全員が同じように表現する必要はないですし、自分のカラーや個性と違う表現をする必要もありません。
自分の個性や持ち味は人それぞれです。
ただ、自分の俳優としての持ち味や個性を自分で理解しているか、また、その個性を表現できているかはとても大事です。
なので、服装選び1つでも大事になってくるんですね。
そこで、今回はその服装選びのポイントと重要性について書きます。
■服を選ぶときの基本的な2つのコンセプト
あなたはオーディションやワークショップなど、初めて自分を知ってもらう場へ行くときの服装をどうやって選んでいますか?
服を選ぶときには、2つのコンセプトがあり、どちらのコンセプトを優先するのか?
または、どうやって2つのコンセプトを融合させるか?といったことが大事になります。
まず、その2つのコンセプトは以下の2つです。
服選びの2つのコンセプト
- オーディションを受ける役柄が決まっているなら、その役柄を徹底的にイメージ化
- 自分という俳優の一番の良さを徹底的に表現できる服
①徹底的に役柄をイメージ化
これは有名な話ですが、中村獅童さんが俳優として大きく売れるきっかけとなった「ピンポン」という映画の話。
獅童さんはその映画のオーディションで、準主役の「ドラゴン」という役を射止めます。
ドラゴンという役はスキンヘッドの役なんですが、獅童さんは役のイメージに合わせ頭をスキンヘッドにしてからオーディションに挑んだそうです。
そのときのスタッフが、後日テレビで語っていました。
「オーディション会場で一目見た時から他の役者と全然目つきが違った。俺がこの役をやる!というすさまじい意気込みを見た」
と。
決まってもいない役のために頭をスキンヘッドにするのは相当勇気のいる行動ですが、そのくらいの覚悟がもてる人は普通に強いですよね。
もしも、どんな役柄のオーディションなのかが事前にハッキリとわかっている場合は「こいつしかいない」と思わせるくらい役をイメージして行くのは1つの手段です。
服装もすべて役柄が乗り移ったかのようなイメージで「どう見ても役の人物にしか見えない」と言わせるような服装で行きましょう。
それだけの意気込みを持った人なら、万が一、対象の役には受からなかったとしても何か別の役や別の作品で配役される可能性は非常に高いでしょう。
②自分の強みや魅力を最大限に表現
・・・え?
自分には特に強みも魅力もない???
そんなことは絶対にありません(笑)
俳優にとっては、どんなことだって強みになりますし魅力となります。
強みや魅力のない人なんていません。
ただ、強みや魅力を活かせていない人は非常に多いです。
もしも今、自分には俳優としての強みや魅力がないと思っているなら、絶対にそんなことはないのでじっくりと自分の俳優としての強みや魅力はどこなのかを考えてみてください。
たとえば、薄毛や肥満など、一般的にはコンプレックスと捉えられるような身体的特徴でさえも、俳優にとっては強みです。
身体的なものだけではなく、性格などもすべてが活かしようによっては強みに変わります。
ネガティブで根暗な性格だとしても、誰よりもずば抜けてネガティブで根暗な空気を持っているなら、根暗な役はその人のものでしょう。
昔、劇作家で演出家のつかこうへいさんが言われた言葉で印象的なものがあって、
「犯罪者を演じる俳優は、実際の犯罪現場に行って本物の犯人だと疑われるような空気を持った奴しか演じちゃいけないんだ」
というものです。
秋葉原に行って何人かのオタク系の人を並べて、その中で間違いなく本物だと言われるくらいの個性を持っていれば、それだって十分に俳優としての魅力になります。
もちろん、上手い演技、上手い台詞回しなどテクニック的なことも重要ですが、それ以上に、その人が放つオーラや空気というのはテクニックで真似られるようなものではないですからね。
だから、あなたが放つ雰囲気だけでも、何か1つ突出すればそれが強みとなります。
「普通の人」という雰囲気でも、「誰と比べてみても一番普通っぽい」となれば、普通の人の役はあなたのものですからね(笑)
そして、自分の強みや魅力がわかったら、その強みや魅力がより一層伝わるような服装を選びましょう。
- より一層、自分の強みを表現する服装
- 自分の個性・カラー・雰囲気・印象を表現する服装
■今日の自分を「設定」するだけで服装は決まる
冒頭で話した「あなたの今日の服装のコンセプトを教えてください」というオーディションの話には続きがあって、その質問に答えられず呆然としている俳優たちにわかりやすく監督が説明してくださったんです。
「たとえば今日のあなたは、どこに住んでいる人の服装をイメージしてきましたか?」
その土地土地で雰囲気や空気感が違うというようなことは、だれもが感じたことがあるのではないでしょうか。
電車の路線でも、それぞれの路線で独特の雰囲気があったりしませんか?
あくまでイメージの話ですが。
それと同じように、たとえば田園調布で暮らしている人と巣鴨で暮らしている人とでは空気感が違ったりするわけですよね。
もちろん、東京と大阪など県が違うと更に大きく空気感が違います。(※あくまで個人差はありますが)
そこで、監督はこう言っていました。
「たとえば今日、主婦の役のオーディションだとして、みんな主婦っぽい服をなんとなく選んできたと思いますが、どこに住んでいるのかという設定を加えるだけでも、服のチョイスやアクセサリーなど身につけるものも違ったと思いませんか?」
そこに、さきほど話した自分の「個性」「雰囲気」「空気感」「カラー」「印象」などをミックスするとより自分らしさが際立ってくるわけですね。
あなたは田園調布で暮らしているっぽい雰囲気を持っているのか、それとも巣鴨っぽいのか、それとも東京ではなくて栃木っぽいのか、などそうしたあなたが持っている雰囲気も、俳優としてのあなたの強みであり魅力ですから、それを最大限に活かした服装を選ぶといいと思います。
「本当は北千住暮らしだけど、私は田園調布で暮らしている雰囲気を持っているから、今日は田園調布の3億円の豪邸に夫と2人で暮らす32歳の主婦という設定で行こう…」
などと決めればいいわけですね。
画像は3億円の豪邸をイメージしてみましたが、どうですか?
こんな家に住んでいる自分が想像できますか?
自分自身の個性や雰囲気、カラーと同時に生活環境などを具体的にイメージするだけでも身につけるものや着る服などが明確になります。
すべての役に合う俳優なんていないわけですから、あれもこれもと幅広く狙わずに、まずは自分の一番の強みを活かした得意分野で攻めてみましょう。
どう見ても本当に田園調布に住んでいるセレブな主婦にしか見えないほどの個性を発揮すれば、そういう役は間違いなくあなたが射止める確率が上がります。
あなたが「こういう役なら他の俳優に、見た目や雰囲気では負けない」という役柄はどんな役柄でしょうか?
■まとめ
オーディションは宝くじではありません。
「運よく決まればいいな~」
というような気持ちではなく、今回決まらなかったとしても次に繋げるために何かしらの爪あとは残してくる!????くらいの気持ちで臨みましょう。
選考する側もプロです。
オーディションに臨む人が、プロとしての自覚や意気込みを持って参加しているかくらいはちゃんと見ています。
そして、プロの俳優として、自分の俳優としての強みや魅力を理解し、ちゃんと自分の一番良い見せ方を知っているかどうかも見ています。
オーディションなどだけではなく、普段から着るものや身につけるものには気を配るようにしましょう。
たまに、これは小劇場など舞台系の俳優などに特に多いですが、稽古着(ジャージなど)でそのまま外を出歩いたり、身だしなみに対する気配りができていない俳優がいます。
もちろん、そういう個性やキャラを俳優としての自分の「売り」にするのであればそれでもいいのですが、ただ気配りができていないだけの人が多いです。
俳優を職業にするということは芸能人になるということです。
芸能人になろうとしているのであれば、やはり一般人から見て「やっぱり俳優さんは違うな~」「清潔感があって綺麗にしてるな~」「芸能人ってオシャレだな~」など、注目の的や憧れの存在になってほしいと思います。
ただ演技をする人になるのではなく、夢や希望を与える存在になれば、おのずとあなたを必要とするファンが増えていくでしょう。
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