これから俳優を目指す人の中には、演じることが全くの未経験という人もいると思います。
演じるというのは、脚本に書いてある「セリフを覚えて、話す」だけではありません。
物語の基盤となる「場所」や「時代」「季節」、そして演じる役の「年齢」や「性別」「家庭環境」や「生い立ち」「性格」など、 様々な情報を基にして役作りをすることになります。
「脚本に書かれていない部分をいかに伝えられるか」ということの方が演じるうえでは大事だったりします。
セリフとして書かれている言葉を口にしたときに、「心の中では何を思っていたか」といった、「感情」だったり、「思惑」というような部分ですね。
■演技力を上げる3つの重要なポイント
一人の人間を演じるまでにやることはたくさんありますし、意識しなければいけないこともキリがないくらいにあります。
経験を積む中で身に付いていくことがほとんどなのであまり難しく考えすぎないことが大事ですが、ここでは役を演じるにあたって演技力を上げるために押さえておきたい大事な3つのポイントをお伝えします。
その3つのポイントは以下の3つです。
演じる役の年齢や生い立ち、性格など自分自身のバックボーンとなる情報と同様に、まずはこの3つのポイントを意識して役作りするようにしてみましょう。
それではこの3つのポイントを簡潔に解説します。
①距離感(関係性)
物語の中で一人きりの場面というのもありますが、基本的には演技は人との会話や交流の中で成立しています。
ということは、自分以外の誰かもそこにいるということですね。
ここでまず意識しておきたいのがその自分以外の登場人物との「関係性」です。
なぜなら、関係性によって「距離感」というのが違ってきますよね。
実生活の中でも、たとえば親と友達とでは距離感が違います。
距離感が違えば、コミュニケーションやスキンシップの取り方も違います。
また、同じ「友達」でも親しい友達と挨拶を交わす程度の友達とでは、言い合えることや触れられる箇所が違ったりします。
なので、脚本を読んで自分が交流を持つ登場人物との関係性を考えてみることが大事です。
適切な距離感で演じることが、お互いの関係性の説得力を増します。
②内面・表出・表現
これも距離感や関係性と同じように大事なことで、「自分の感情を、どのような表現方法で、どのくらい出すか」ということです。
それを「内面・表出・表現」の法則と呼んでいます。
「内面」は、何かの出来事に直面したときに「どう感じるのか」「何を思うのか」「どうしようと考えるのか」といったあなたの内面のことです。
つまり「感情」や「思考」「思惑」などですね。
そして「表出」は、その感情や思考、思惑をどのぐらい表に出すかということです。
人は、自分の感情や考えていることの全てを表に出さないことの方が多いですよね。
では、どのくらい表に出すのか?というのが「表出」です。
そして「表現」は、「どのようにして表に現すのか」という考え方です。
同じように怒っていても、鬼のような形相をして怒る人もいれば、 自分の気持ちを押しころしながら笑いながら怒る人もいたりします。
同じ感情でも、それをどう表現するかは人によって違いますよね。
「内面・表出・表現」を考えるということは、つまりは自分が演じる役がどんな人間であるか?ということを考えるのと同じことです。
なので、これから役を演じる時には、まず脚本を読んで、他の登場人物のセリフを聞いたり何か出来事に遭遇した時に、自分(演じる役)が何を感じてどんな感情になったのか、そしてその感情をどのような表現で、どのぐらい表に出すのかということを考えて、役作りに生かしてみてください。
③自分のことにし過ぎない
3つ目のポイントも大事なので頭の片隅に置いておいてほしいのですが、自分が演じる役というのはついつい自分のこととして捉えがちです。
でも、あなたが演じる役は、あなたとは全く別の人間です。
生まれ育った環境や生い立ち、そして考え方や性格も全く違う人間です。
そうとはわかっていても、自分が演じる役というのはついつい自分のことのように捉えてしまい「このセリフはこんな感じで言おう」「ここはこうしよう」と、 自分の主観で考えてしまう時が多々あるかと思います。
もちろん自分が演じる役なので、自分というフィルターを通すことは大事ですが、「この人(役の人間)ならどう感じるだろう?どうするんだろう?」 と考えることを忘れないようにしましょう。
好きな相手のことを「こんな時どう思ってくれるかな」「どんな風な顔をするかな」と、四六時中考えていたりしますよね。
それと同じように、相手(演じる役)に興味を持ち、相手のことを全部知りたいと思いながら考えるようにしてみてください。
演じる役の人物に恋できたらいいかもしれませんね。もしくは、親友のようになるとか。
■まとめ
演じることが未経験の人であれば特に、最初の頃はセリフを覚えて話す。動きを覚える。といった基本的なことだけでいっぱいいっぱいになってしまうと思います。
でもそんな時こそ、この3つの重要なポイントを思い返して意識してみてください。
この3つのポイントを意識するだけで、感情のない棒読みの演技になったりするのを防ぐことができます。