こんにちは????
今回は「腹式呼吸」について書きたいと思います。
腹式呼吸のやり方や練習方法などはネットで調べればたくさん出てきますが、人によって教え方や解釈がさまざまです。
僕もいろんな先生から腹式呼吸や発声方法のレッスンを受けてきましたが、先生によって言ってることが真逆?というようなこともたくさん経験しました(笑)
なので、そんな中から本当に大事だと感じたことだけをお伝えします。
■腹式呼吸と胸式呼吸は同じ
まず腹式呼吸を学ぶにしても、胸式呼吸と腹式呼吸の違いを知っておかなければいけません。
ハッキリ言います。同じです(笑)
ニュアンスとして、胸式呼吸と言えば「胸に空気を入れること」で、腹式呼吸と言えば「お腹に空気を入れること」のように思ってしまいますよね?
でも、正式にはどちらも「胸腹式」呼吸で、呼吸自体は 胸郭(胸を取り囲んでいる骨格)と横隔膜の動きによって肺で行われます。
胸式呼吸と腹式呼吸の違いは、その骨格や横隔膜を動かす力加減(バランス)の違いといったニュアンスです。
早い速度で歩くのと、ゆっくりの速度で歩くのと、動作自体は同じですよね?
ただ「早い」か「遅い」の違いで、使う筋肉の力の入れ方(バランス)が違います。
原理としてはそれと同じです。
そうしたニュアンスがわかっていないと、腹式呼吸ってとても難しいことのように感じてしまいますので、そこは最初に理解しておいてください。
- 腹式呼吸と胸式呼吸の原理は同じ
- 使う筋肉や体の力の入れ方、バランスの違い
■腹式呼吸の練習と発声練習とは別物
これもよく誤解してしまうことですが、腹式呼吸と発声練習とがごちゃ混ぜになってしまっている人がいます。
正しく発声することを目的にしたり、声をコントロールすることを目的にする場合は、呼吸法とは別の「発声法」を練習する必要があるので間違わないようにしましょう。
もちろん、きれいな発声や力強い発声をするためには腹式呼吸をマスターするべきですが、腹式呼吸は、あくまで「呼吸法」なので発声練習ではありません。
たとえば、野球選手がヒットやホームランを打つための練習として、バッティング練習と同時に下半身も鍛えます。
俳優に置き換えるなら、声をコントロールする練習は「バッティング練習」で、腹式呼吸は「下半身を鍛える」のと同じ。
つまり、声を出すための筋トレのようなものだと考えればわかりやすいですね。
- 「腹式呼吸」はあくまで呼吸法
- 発声練習とは別物
■腹式呼吸の仕組み
基本的には「腹式呼吸」も「胸式呼吸」も同じ原理で呼吸しているので、先ほどお伝えした通り、特別に使う筋肉が違うというわけではありません。
原理として言えば、全ての呼吸は「胸腹式呼吸」です。
「肩や胸で息をするのが胸式呼吸」などと言われたりもしますが、これもあくまでイメージや、意識している筋肉の問題であって、実際に空気を取り込む部分が変わるということではありません。
空気(息)は肺に取り込みます。
専門的な言い方は余計に難しく感じてしまうので簡単に書きますが、まず、肋骨の一番下辺りに横隔膜というのがあります。
この横隔膜が収縮することによって、胸郭(胸を取り囲んでいる骨格)が広がって肺にブワっと空気を取り込むイメージです。
呼吸の仕組みに関しては下記のサイトでわかりやすく解説されているので参考にしてみてください。(特に図2がとてもわかりやすいです)
イメージとしては、横隔膜が下に収縮して胸郭が(と同時に肺も)広がって、そこに空気が入る感じです。
なので、できるだけ大きく胸郭と同時に肺を広げて、たくさんの空気を取り込むのが腹式呼吸というイメージですね。
なぜ「腹式呼吸」と言われるかと言うと、その胸郭や肺を大きく広げるためにも横隔膜をできるだけ下に収縮させることが重要だからです。
「横隔膜を動かす=お腹を動かす」のようなイメージですね。
さきほど少し例に挙げた「肩で息をする」なんていうのは、肩や胸周りの筋肉を動かすことで胸郭や肺を大きく広げようするので、胸(周辺)の動きを意識した呼吸になるわけですね。
そうした呼吸を、俗に言う「胸式呼吸」と呼びます。
でも、いくら胸や肩の動きで胸郭や肺を大きく広げようとしても、横隔膜が大きく動いていなければたくさんの息を吸い込むことができませんよね。
たくさんの息を吸い込めなければ、当然、長音(ロングトーン)は出せません。
力強い声を出そうと思うと、息をしっかりと吐くことが大事ですが、そもそもたくさんの空気が溜まっていなければ吐き出す空気も弱くなってしまいますからね。
腹式呼吸がなかなかうまくできないと相談をもらったりしますが、まずはこうした仕組みを知っておくことで、どういう部分に意識を向けるべきかがわかってくると思いますので、まずは仕組みをしっかり理解しておきましょう。
- たくさんの息を吸い込むためには、胸郭(胸を取り囲んでいる骨格)や肺を大きく広げることが大事
- 胸郭(胸を取り囲んでいる骨格)や肺を大きく広げるためには、横隔膜をできるだけ大きく収縮させる
- しっかりと横隔膜を下げてたくさんの息を吸い込めていれば、力強く長く息が続く
■腹式呼吸の練習のやり方
さあ、それではいよいよ腹式呼吸の訓練の仕方ですが、これはたくさんの方法があります。
が!
全ての方法が万能ではない。ということを、まず、知っておいてください。
僕自身、いろんな先生のもとでレッスンを受けましたが、一緒にレッスンを受ける人なども観察していて気づいたことがあります。
それは、同じ先生に教えてもらっているのに、順調に効果が表れる人とあまり効果が出ない人がいるということです。
そして、効果が表れる人にはある共通点があることにも気づきました。
それは、自分の体の使い方を理解しているかどうか、です。
自分の体の動きを感じ、どのように力を入れれば(または抜けば)どこが、どのように動くのか、自分の体の使い方を知らなければ腹式呼吸をマスターするのは難しいということです。
反対に言えば、自分の体の動きを感じ取ることができるようになり、力の入れ方(抜き方)や動かし方が理解できれば、腹式呼吸の練習方法はどれでも正解だということです。
僕自身もいろいろな先生のレッスンを受ける中で、急に何かのスイッチを押されたかのように腹式呼吸の仕組みや、体の仕組み、動かし方などが理解できるようになりました。
どのようなタイミングでその感覚をつかめるかは人それぞれなので、いろんな練習方法を試してみるのがいいと思います。
よくストレッチなどでも、「今伸びているところを意識して」と言われますよね。
中には「今伸びている筋に話しかけてあげて」という先生もいました(笑)
体のどの部分に働きかけているのかピンポイントに意識を向けるというのは絶大な効果があります。
それと同じように、腹式呼吸も仕組みを理解し、目的と課題を持って意識的に取り組む。
それが、腹式呼吸マスターへの一番の早道であり、簡単な方法です。
・仰向けに寝転がって自分の体を感じる
腹式呼吸の訓練方法は数多くありますが、まず、自分の体を知るということから始めるためにも、一番のおすすめは仰向けに寝転がって練習する方法です。
この練習方法の良いところは、寝た状態で呼吸をすると自然と腹式呼吸になるということと、寝転がって体を床につけた状態が一番自分の体を感じやすいという点だと思います。
立った状態で何も意識しないで呼吸すると、肩や胸の動きで呼吸しようとして自然に肩や胸が動いたり、必要のないところに力が入ったりしますが、寝た状態で床に体を密着させると、肩や胸などが動きにくくなります。
そうすると、自然とお腹を使って呼吸しようとするんですね。
そもそもは「胸腹式呼吸」が自然の状態ですので、胸かお腹のどちらかだけということはないんですが、体を床に密着させて肩や胸が動きづらくすることで、お腹(横隔膜)に意識が集中するというような感じですね。
比率と言うか、肩、胸、お腹のバランスの問題です。
この寝た状態で練習する方法で一番大事なのは、自然と腹式呼吸と呼ばれる状態になった体の力の入り具合や抜け具合、それから空気が入っていく感じや溜まっていく感じ、または吐き出す感じ。
そうした体の動き全てを、感じられようになることが一番の目的です。
自分の体の動きを自分自身で感じ取れるようになると、どんな訓練方法でも効果が出るスピードは速くなります。
反対にその感覚を感じないままただ動作を繰り返しているだけでは、どんな練習をしても効果が出るまでには相当時間がかかります。
そして、自分の体の感覚を感じ取れるようになったら、普通に息を吸い込んでみたり、あくびをする時と同じような喉の開き方で息を吸い込んでみたり、他には鼻から息を吸ってみたり口から息を吸ってみたりして、それぞれの違いを感じてみましょう。
そうすることで「どこがどう違うのか?」「どの状態が一番負荷がかからず楽にたくさん息が吸い込めるか?」を試し、その時の筋肉の使い方や感覚を覚え、自分の意思で体をコントロールする練習をします。
そしてそれができるようになったら、今度は立った状態で同じように体が使えるように練習しましょう。
また、寝た状態で片方の手は胸に、もう片方の手はお腹(丹田)に手を置いて、息を吸ったり吐いたりすることで、どこがどのように膨らむかなど実際に動いている部分がわかりやすくなるのでおすすめです。
■どのくらい続ければ効果が出る?
よく「どのくらいで腹式呼吸ができるようになりますか?」と質問されますが、ここまでの説明でもわかっていただけるかと思いますが、人それぞれです。
自分自身で自分の体の動く感覚をつかんだ人はすぐにできるようになる人もいますし、感覚をつかめていない人は、どれだけいろんな練習方法を試してもなかなか効果は出ません。
なので腹式呼吸をマスターするためにも、まずは自分の体を知ること。呼吸のときに体のどの部分がどういう風に動いているのか、呼吸の仕組みを感じ一番良い状態で呼吸出来るときの体の使い方を感じ取れるようになることを最初の目標にしてください。
■横隔膜を鍛える方法
結局のところ、深く大きく肺を広げてたくさんの息を吸うためには横隔膜を大きく収縮させることが大事です。
腹式呼吸をマスターするとは、その横隔膜を大きく収縮させるための体の使い方を習得するということです。
横隔膜を鍛える訓練方法は、
- 口と鼻をふさいで、そのまま思いきり息を吸い込む動作をする
- ストローをくわえて、早く息を吸い込む動作をする
- パワーブリーズを使って鍛える
などがあります。
①口と鼻をふさいでそのままの状態で思いっきり息を吸い込むと、お腹周りの動きをとても感じやすくなりますし、毎日、繰り返し行うことで必要な筋肉が鍛えられます。
②ストローをくわえて一気に素早く息を吸い込む動作も、お腹の動きをダイレクトに感じられますので一度試してみてください。ポイントは、思いっきり素早くそして深く息を吸い込もうとすればするほど負荷がかかります。
③パワーブリーズは、ある特集番組でB’zの稲葉さんがコンサート直前までこのパワーブリーズを使って横隔膜のウォーミングアップをしている様子がクローズアップされたことがあり、知る人ぞ知るという感じですが、主にスポーツ選手などが呼吸トレーニングなどの際に使用している器具で、腹筋や背筋、そして横隔膜などの肺機能を強化します。
↓こういうものです。
小さくて軽く持ち運び可能なので、いつでもどこでも手軽に呼吸筋肉を強化するトレーニングができるという優れものです。
日常的なトレーニングにも使えますし、もちろん撮影現場や舞台公演時でもいつでも持ち歩けます。楽天などで探すといろんな種類のものがありますので、ご予算や用途に合わせて1つは持っておきたいアイテムですね。
詳しいパワーブリーズの解説は、こちらの専門サイトがわかりやすいです。
■まとめ
腹式呼吸の訓練だけに限らず、たとえばそれがストレッチでもダンスでも殺陣でも、それこそ演技でも、練習方法を習っただけでそれが身につくというものではありません。
これから様々なレッスンやワークショップなどを受けることがあると思いますが、そこで教わることはヒントでしかないということを頭に置いておきましょう。
そのヒントを基に自分で感じ、理解し、工夫して創り上げていかないと身にはつきません。
これから先、監督や演出家から言われることも同じです。
監督に右を向けと言われたから右を向く。そこで振り返れと言われたから振り返る。そのように言われたことをやっているだけでは、演技力は身につきません。
「そこで右を向くことにどんな意味があるのか?」
「そこで右を向くことでどんな効果があるのか?」
「なぜもう一歩前で振り返るよりこの位置の方がいいのか?」
など、自分自身で自分の行動や動作の意味を理解し、1つ1つをしっかり感じ取りながら実践するからこそ身についていきます。
それは腹式呼吸でも同じです。
ただ教えられた練習方法をやってみる。書いてある通りにやってみるだけで終わってしまわずに、呼吸の仕組みを体から感じ取り、体のどこをどういう風に使えばいいのか、どこをどういう風に鍛えればいいのか、しっかりと自分の体と対話しながら、進めていきましょう。
僕も先生に言われることをただやっていただけの時は全く身につきませんでしたが、自分で考え、自分の課題を持って工夫して取り組むようになったらものすごいスピードで身についていくのを感じました。
是非、自分の努力を無駄にしないよう実の詰まった訓練をしましょう。